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蝶の翅の輝き

2010年06月24日 17:32

モルフォ蝶は太陽の光を浴びて、見る角度により色を代える青を基調とした鮮やかな色彩の蝶である。この蝶は青色の色素を纏っているのではなく、鱗粉の微細構造により、光を屈折させ主に青色の波長を反射することで、青く見せる構造色で着飾っている(写真1)。

身近な構造色にはコンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。コンパクトディスクやシャボンには、それ自身には色がついていないが、その微細な構造によって光が干渉するため、色づいて見える。構造色の特徴として、見る角度に応じて、様々な色彩が見られることが挙げられる。色素や顔料による発色と異なり、紫外線などにより脱色することがなく、繊維や自動車の塗装など工業的応用研究が進んでいる。光の波長程度の薄い膜では、膜の上面で反射する光と下面で反射する光が干渉するため、膜の厚さに対応した波長光が色づいて見える。シャボン玉や油膜に色が付いて見えるのは、このような薄膜干渉に起因している。シャボンや油膜の厚さに応じて、様々に色づいて見える。

アワビ等の貝殻の内側は、真珠母と呼ばれる炭酸カルシウムの薄膜が層構造を形成しており、1つ1つの層から反射される光が干渉することで、様々な色合いが見られる。これを多層膜干渉と呼ぶ。タマムシ、ハナムグリといった甲虫類に見られる金属光沢に富んだ色彩は、キチン質の層構造によるものである。オオゴマダラといったチョウの蛹も同様に金属光沢のある構造色が見られる。
コンパクトディスクやDVDではアルミ薄膜表面に刻まれた凹凸によってデジタル情報を記録している。この凹凸が回折格子の様に光を干渉するため、記録面側は虹色に見える。これは微細な溝、突起によって起こる干渉色である。クジャクやカワセミといった鳥類では、羽毛にある微細な構造によって、鮮やかな色彩が現れる。(Wikipedia)。

話を蝶の翅の輝きにもどそう。『生きた宝石』とも呼ばれるモルフォチョウの翅は、鮮やかな青色をしているが、これは鱗粉表面に刻まれた格子状の構造による構造色である。
モルフォ蝶の鱗粉は約180x75ミクロンの長方形で、モンシロ蝶は100x55ミクロンくらいの花びらのような形をしていて、いずれも瓦のように一部重なりながら、規則正しく敷き詰められている(写真2)。
更に拡大するとモルフォ蝶では約1μm周期の縞状構造が見えてくる。竹製の垣根や天井のように、節のような凹凸がある棒が平行に並んだ構造である。また、苗を植えた畑の畝のようにも見える(写真3)。
モルフォ蝶の鱗粉の構造をさらに詳しく調べるため、約1μm周期の畝構造を断面方向から観察したのが(写真4)である。
この多層膜構造について、大阪大学の木下修一教授が詳しく調べ、青色などの色に見える理由を説明している。
多層膜構造を棚構造と呼び、その構造では組織の屈折率と間隔から、垂直に光を入れたとき、もっとも強く反射する光の波長は480nmになり、青色に見える原因となると説明されている。しかも、各列は規則的に見えるが、正確には上下の差や傾きがあり、各列の光が干渉するほど規則的でない(非干渉)ことから、どの方向から見てもきらきらと同じ色だけが見える理由であると説明されている。このように、特殊な構造によって、特定の波長の光だけを反射して見える色を「構造色」と呼んでいる。光の波長より小さい微細構造、規則と不規則の共存で構造色が発生するという(文ちゃんのタイニーカフェテラスより)。

自然界の驚異としか言いようの無いナノテクを利用した極彩色の進化である。自然は進化の過程で特定の波長のみを反射する超微細構造を作り上げ、鮮やかな色褪せない色彩をつくりあげ、その衣をもって蝶の翅を飾り、カワセミの華やかな羽を作り出し、玉虫の虹色に輝くコートを作り上げて来た。これを自然の驚異と言わずしてなんと言うのであろうか。
地球を支配し、自然を自分達の都合で壊し続けて来た人間も、やっとこの仕組みを解明し、構造色を利用しようとする所まで到達した。蝶の翅一つにしても、それは自然界が何億年もかかって、試行錯誤の過程で作り上げて来た宝石である。その個体を絶滅させてしまえば、永久にこの宝石を失う事になる。生物学を志すものにとって、一匹一匹の虫や生物の多様性に目を向け、気の遠くなるような長い年月をかけて進化して来た、種が失われないように努力しなくてはならない。
日頃、気にも留めていない虫や毛嫌いされている虫達も驚異のハイテクをもってその体は造られている。人間はそれら虫達が持っている、ハイテク機能を学び応用しようとしている。人に毛嫌いされているゴキブリをとってしてもそうかも知れない。ゴキブリも進化の過程を経て長年生きて来たし、現在も生きている。人の生活に都合悪いとか気持ち悪いというだけで殺していいものか?
参考
勢多農林高http://www3.wind.ne.jp/a2480/2006/h18/h50s/50s.html校理科部

写真1 モルフォ蝶 写真2 モルフォ蝶鱗粉構造  写真3 鱗粉の微細構造  写真4 鱗粉構造の切断面

写真5 カワセミ(walkbirder.exblog.jp/ より)
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グローバルな世界における日本の科学

2010年06月14日 17:49

Japanese Science in a Global World (グローバルな世界における日本の科学)

     Arai Ken-ichi (新井賢一)Science 328, 1207 (2010)

新井賢一先生(元東大医科研所長, 現President of Asia-Pacific International Molecular Biology Network)が
Science のEditorialの巻頭言で日本のこれから採るべき科学政策について論じている。

日本はここ20年間ぱっとしない成長であったが、2010年の年頭経済的にはちょっぴり明るいニュースがもたらされた。依然、国の負債は大きく、デフレが重大な問題としてのしかかっているが、世界で2番目の経済大国の経済が2009年末の四半期において成長に転じたことである。しかしそれは日本が長期的に回復基調に入ったことを意味していない。2011年度の科学予算のカットはそれ程厳しくはなかったが、いやな兆候は政府が日本の科学のインフラへの投資を凍結し、地球科学や気象学その他の領域への支出を、これらの試みは著名な科学者達によって阻止はされたが、減らそうとしていることである。政策立案者に科学技術への投資を促進しようとする意識が無いために、間違った方向の考えが生まれる。それゆえ、研究者が国の科学政策形成に率先して関与し、若い科学者を国際社会のネットワークに導いて、国際社会での経済的な成功を支援する必要があることに気づき始めた。

第2次大戦後、日本はたくましい経済を、工業生産に集中することで作り上げて来た。しかし商品への世界的な需要が急激に冷え込み、バブルが崩壊し、科学、技術、工業における古い組織構造の改革に失敗して、日本は1990年代に経済危機に陥った。その結果、起業やベンチャーを通しての急速な対応ができなかった。自由民主党に率いられた日本政府は科学や工業の改革を試みた。目標は博士課程の学生やポスドクを増やして目的志向型のプロジェクトを増やして新たな産業を興す事にあった。
その結果、博士過程の学生やポスドクの数や一流誌への成果の発表は増えた。しかしながら、トップダウンの決定による目的志向型の大型サイエンスへの移行が起こり、わずかな少数の大型プロジェクトに予算が集中することとなった。そして多くの個人科学者や小さいがより焦点をしぼって努力している研究者には予算が廻らず、ごくわずかな一部の研究者にのみ予算が配分される事になった。これらの事は今日の若い研究者にトップダウン方式での研究環境ではキャリヤーパス構築ができないことを認識させる事となり、最近の日本の博士課程卒業者が外国に行き、専門性や教育的見地を広げ、共同研究関係を作り出すことをしなくなることに繋がった。1960年代から1990年代にかけて、多くの日本人研究者がポスドクのトレイニングに北アメリカやヨーロッパに行った。今日、若い日本の研究者は就職難に遭遇し、留学したら日本に帰れない可能性におびえている。理由はどうあれ、若い研究者が内向きの姿勢になり、強い国際的科学ネットワークを作りたがらない。一方で、他のアジア各国、とりわけ中国、インド、韓国、マレイシア、シンガポール、タイなどは精力的にそのようなつながりを強めようとしている。

以前の日本政府が改革しようとした目的は、結局成功しなかったけど、国籍や性および歳に関係無しに、キャリアー構築への国際的なパスをサポートする開かれた研究システムを構築して、若い研究者に独立を与える事であった。研究者が独自の興味を自由に追い求める事のできる科学技術の開かれたボトムアップ方式のプラットホームにおいてこそ、目標を追求する事が他の国、特にアジア諸国と交換可能なキャリアーパスを構築することに繋がるであろう。そのような柔軟な研究のインフラが多くのアジア諸国の間で機会を共有することを可能にするであろうし、健康、食糧、エネルギーおよび環境という共通の問題に取り組むのを助けることのもなるであろう。

昨年の選挙で民主党が勝利したが、鳩山首相の科学政策は当初明らかではなかった。今日、新しい政府がゲノムや幹細胞研究、バイオテックベンチャーやグリーン技術プログラム研究を促進して行きたいと表明した事は喜ばしいことである。しかし、経済回復が滞ることにでもなれば、科学技術は厳しい予算削減に見舞われるであろう。よって科学者はグローバルな経験を積ませ、革新的な研究者を産み出すのを支援するためには、日本を持続的に成長に導くような政策に直接投資するように、政策決定者と議論していかなければならない。

新井先生が言っているポイントを挙げると
1 トップダウンの決定による少数の研究者にのみ予算が集中している。
2 不景気が長く続いたため若い研究者が内向きになり、海外との交流を好まなくなった。
3 アジア諸国と協調して国際的に通用するキャリアーパスを構築する必要がある。
4 科学者が積極的に日本の経済を伸ばす方向の科学技術への投資を行うよう政策決定者と議論しなければならない。

確かにその通りであり、このような議論はもう10年以上にわたってつづけられてきた。しかし何一つ変わっていないというより、研究環境が益々悪くなっている。これは政府(役人?)が科学政策をコントロールしようとして、同じような大型プロジェクトをいくつも立ち上げたことによる弊害が大きい。一応は一般競争原理によるファンドの形をとってはいるが、研究領域、応用性や歳などいろんな制限がかけられ、自由には応募できないシステムになっている。その結果実際に自由に応募できるグラントが減ってしまった。このような窮屈な研究環境を続けていると、優秀で積極的な若い研究者は海外で研究する事を選ぶようになるであろうし、一方、内向きの消極的な研究者は益々研究費がとれず、研究もできず、研究者間での格差が益々広がって行く事であろう。

ああーどないしたらいいんや。

     

貝に寄生するかに

2010年06月05日 14:07

アサリのみそ汁

アサリのみそ汁を食べた時に時折、貝の中に小さなカニが入っているのに遭遇する。このカニはどこから入って来たのだろうと不思議に思っていたが、このカニはアサリなどの2枚貝に寄生するカニだそうだ。
このカニの名前はpinno(ピンノ)
オオシロピンノ、クロピンノ、カギツメピンノなどたくさんの種類がある。
ピンノとは学名の中の属名(genus name)Pinnotheresの一部をつけたもの。学名はPinnotheres sinensis Shen 分類は十脚目・短尾亜目・カクレガニ科 。大きさは甲幅1.5cm で分布は主に東京湾以南(太平洋岸)。


日本語ではカクレガニという名前がついているんだそうだ。
ほとんどが二枚貝に寄生するが中には巻き貝に寄生するものもあると言う。
宿主としてはアサリ・ハマグリ・バカガイ・マガキ・ムラサキイガイなどがあるようで、最近では東京湾でホンビノスガイに寄生しているものも見つかっている。二枚貝に寄生していることが多いけど、時には干潟の砂泥を振るっているときに見出されることなどもあり、貝から出て移動していることもあるのかもしれない。

甲幅は1センチに満たないぐらいの小さなカニで、オスとメスで形態が異なる。
オスは甲羅が丸く額がやや突出していて、色は褐色で、栗のような形の甲羅で(写真1)、メスは甲羅が丸く、額はほとんど突出せず、全体的に白っぽい色をしている(写真2)。甲羅の後縁はくぼんでいる。干潟でよく見かけるよく似た種としてカギヅメピンノのメスがあるが、カギヅメピンノのメスは甲羅の後縁が窪まないことで見分けられるんだそうだ。

本種は二枚貝の外套膜のあたりに寄生しているため、野外ではなかなか生きた二枚貝を開くことはしないので見つけられず、お味噌汁にするとか、二枚貝を標本にする時などに見つかることが多い。時期や場所によっても寄生率がことなるが、案外とたくさん入っているみたい。実際にアサリを食べる時にかなりの頻度で、赤く茹でられて見つかる。

宿主を食べてしまうことはないが、狭い空間を占拠するため、食用二枚貝の場合には肉がやせ、いわゆる「身入りが悪い」と嫌われる。目につくのは甲幅1センチメートル内外の雌で、膜質の軟らかい甲をもち、目の角膜色素を失っている。メガロパ幼生あるいは稚ガニへの変態直後に宿主に入るものと考えられ、その後は自由生活をすることはない。雄は雌の4分の1ないし2分の1しかなく、宿主に自由に出入りすることができる。夏の生殖期には雌とともに宿主内でみいだされるが、そのほかの時期は自由生活をするらしく、甲も十分に硬い。しかし、自由生活の雄が発見されたことはなく、生活史はいまだに謎(なぞ)のままだそうだ。

長年思っていた疑問、何故こんなとこに小さなカニが入っているの?偶然貝が開いている時に入って、出られなくなったのかと思っていたのが間違い。積極的に寄生するために入っていたなんて。このカニは一旦貝の中に入ると、一生外界を知らず、一カ所にとどまり、貝と運命をともにする。ああ種の生き残りのためと言えど、なんていう生き方を選んだのだと感嘆せざるにはおれない。
ただこのオオシロピンノという貝に寄生する小さなカニにも以前書いたカニに寄生するフクロウムシが住み着き、雄のカニが雌化しているのが見つかったそうである。自然界恐るべし。
次にアサリを食べる時によく注意して食べて欲しい。

写真1 雄のかに 写真2 雌のかに(恐怖の寄生生物より)


kisei.jpg
pinno31.jpg


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