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山崎豊子作「不毛地帯」

2008年12月11日 15:08

陸軍参謀「瀬島龍三」と「不毛地帯」の壱岐正

瀬島龍三は大本営作戦参謀として太平洋戦争開戦以降の陸軍のほぼ全ての作戦の立案、指導にあたった。
陸軍士官学校を次席で卒業(1932年、首席は原四郎)。陸軍大学校は首席での卒業であった。太平洋戦争では作戦参謀としてマレー上陸作戦、ガダルカナル撤退作戦、ニューギニア作戦、インパール作戦、菊水作戦を担当した。
戦争末期の1945年7月1日から関東軍参謀となり、対ソ防衛戦を指揮する。8月15日に日本が降伏。東軍司令官の山田乙三や秦総参謀長と極東ソ連軍総司令官アレクサンドル、バシレフスキー元帥に停戦交渉に赴くも、捕虜となる。極東裁判においては、陸軍中将を最後に予備役に入り、終戦当時は大陸鉄道司令官であった草場辰巳と関東軍総参謀副長(陸軍少将)の松村知勝とともにソ連国の証人として出廷し、自分は満州国設立や対ソ連戦の指揮には携わっていないと証言する。草場辰巳は訴追側証人として出廷する前に自決した。
その後、瀬島はシベリアに11年の長きにわたって抑留、強制労働に従事させられ、生きた地獄を味わうこととなる。復員後、1958年伊藤忠商事に入社し、入社3年目で業務部長、翌年には取締役業務本部長、半年後に常務、さらに入社19年後に専務、副社長、副会長を経て会長になった。さらに中曽根康弘政権のブレーンとして活躍し、95歳の長き人生を全うし永眠。

 山崎豊子作「不毛地帯」では、瀬島がモデルの壱岐正は関東軍参謀として終戦を迎える。シベリア抑留を経て帰国し大阪に本社がある近畿商事(伊藤忠商事)の社長大門一三のたっての頼みで入社し、個人経営的な前近代的商社を日本の代表的な商社にするため、参謀としての能力を会社経営戦略に生かす。個人ではなく組織として動く会社をめざし、糸偏商社の名前を返上して、重化学工業に強い商社にするために力を発揮する。ライバルとして出てくる鮫島辰三(東京商事)は日商岩井の元副社長海部八郎がモデルとされる。海部は神戸大を卒業後日商に入社し、副社長にまで昇進した人物。特に航空機における商圏を確立し、航空自衛隊FX選定におけるF-4や、F-15採用では、いずれも、日商岩井がメーカー代理店となり、同航空機部は「海部軍団」と呼ばれ伊藤忠商事の瀬島機関と対比された。ダグラス・グラマン事件で外為法違反・偽証罪の容疑で逮捕され、副社長を辞任。小壱岐も本人の意思とは別に利権がらみの戦闘機の機種選定での防衛庁への戦闘機売り込みに関わるようになり、その過程で友人の航空自衛隊防衛部長・川又空将補を死に追いやることになる。その後当分の間アメリカ近畿商事の社長として勤務し、日本に帰ってきた後、副社長に昇格し、脱繊維を目指し、自動車の外資との連携や参謀時代にいやというほどその必要性を感じた石油の獲得をめざし、日本のエネルギー自立をはかるべく、石油採掘の事業を立ち上げる。
終盤では大門社長が独断でした綿糸取引が大損となり、老害が目立ち始めると、社長を辞めるように辞職を勧告する。一方、イランでの石油がやっと5本目の井戸を掘ったところから噴出し、周囲から次期社長の声が出る中を大門社長とともに会社を辞す。一人シベリアに散った同僚たちの慰霊を慰めるべくシベリアに出立する飛行機の中で昔を回想するシーンで小説は終わる。

しかし現実の人物は会長にまで上り詰め、国家の要職にもつき95歳という長寿を生きている。生涯、多くの人々を死に追いやった作戦を立案し、指導した事への反省の弁は生涯聞かれなかった。私は戦争初期、中期のころの作戦については失敗に終わったものもある程度仕方ないと思っているが、終盤に至って菊水(楠木正成の旗印)作戦などの無謀とも言える特攻作戦をも立案した責任は大きいと言わざるを得ない。その結果海軍では2,045名、陸軍では1,022名が特攻により戦死した。菊水作戦を指揮した宇垣纏中将は、終戦の玉音放送を聴いた後に、艦上爆撃機「彗星」で出撃して「最後の特攻」を行い、沖縄諸島方面で戦死した。

陸軍は代々陸軍大学を優等で卒業した軍刀組が組織の中枢を占め、卒業席次で出世がきまるという慣行があった。陸軍大学のごく一部の究極の学校秀才たちの独善によって戦争が遂行されたことに日本の不幸がある。一方の海軍では席次はそれほど重視されなかった。しかし陸軍秀才組の多くは人間的に冷酷だとか、残虐だとかいうことはなく、ある面「不毛地帯」の壱岐正のような合理的で折り目正しい素顔を持っていた。戦後になって、このような学校秀才万能システムが今度は官僚機構に持ち込まれ、大蔵省、財務省のごくわずかなエリートたちの支配する官僚となった。しかも、これらの組織の秀才たちは誰一人として、自ら立案した計画が失敗しても責任を取ろうとはしないことも同じである。しかし官僚機構もいまでは破綻しつつある事は皆さんご承知の通り。

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