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孤独なpenpen

2009年02月10日 19:41

新しい年が明けた。100年に一度の大不景気も満足する事を知らない人間が欲望を膨らまし、グローバル化を金科玉条にして、世界を競わせ大量消費をあおり、借金をしてまで買いあさった結果だ。更に人は自分の欲望のため、地球をも破壊しつつあり、何十億年もかかって進化してきた自然は今や息絶え絶えとしている。
年頭にあたり、破壊される地球と人間の横暴に抗議の心を込めて短い小説を書いてみた。だれかこの小品のイラストを描いてくれる方はいませんでしょうか?
(この文章は正月の間に書いたものですが、もはや2月も半ば。手直しのため少し外っておいたため、発表の時期がずれた。)


-Lonely penpen-
       written by superpenpen


  いつの頃からか地表を覆っていた氷が解け始め、棚氷も年を追うごとに痩せ細り、黒い雲かと見まごうばかりにいた大好物のオキアミやイカも少なくなってきた。何百年も何千年もの間、先祖代々住み慣れた岩だらけの島での生活はちょっぴり不便だけど、それでも魚でいっぱいのおなかを抱えて、仲間同士助け合って、岩山をよじ上って巣への道を急いだものだった。いつの頃か人間がクジラを追って現れ始め、ところかまわず荒らし回るようになった。人工の岸壁や小屋を作り、ごみを放置して、何万年、何千年けがされることのなかった自然が次第に失われ、ペンギンには住みにくい荒廃した南氷洋の島となってきた。最悪なのは近年にはいり人間があちらこちらの島に犬や猫を連れて住みつき、牧場を作るため自然を破壊し、我々の住処を占拠し、羊を飼っておきながら、動物愛護だ、ペンギンを保護しなければと叫んでいることだ。

(1) 希望

あの頃は若かった。颯爽と金髪のリーゼンをなびかせ、胸を反らして岩の上をこれ見よがしに飛び回ったものさ。燃えるような真っ赤な目はルビーの瞳。情熱そのもの。海中に潜れば空を飛ぶように羽ばたき、矢のような速さで魚を追いかけた。俺にかかればどんな魚だってもうおしまいさ。蒼い空に蒼い海。はち切れんばかりの希望が胸につまっていた。いつも何かでっかいことをやってやろう、地球を引っ掻いてやろうと思っていた。何に束縛される事もなく自由に泳ぎ回り、夜になると満点の星空をあおいでの一寝入り、日が昇れば魚採りに明け暮れた。氷山の下をひょいとくぐり抜け、魚を追った日もあった。冬には棚氷が突き出て、一面氷と雪の世界。冷たい風が吹き荒れても、へっちゃらだった。氷の合間から海に入ると大しけでも水の中は静寂そのもの。音のない水中を飛び回ると、まさに天下を取ったような気分。仲間のペンギン達にもこの身軽で格好いい自分の姿を見せつけ、得意の絶頂だった。オキアミや小魚はあちらこちらで群れて泳ぎ回り、大好きなイカも簡単にありつけた。ある時は南極からの寒流に乗って遠足をし、はち切れんばかりの魚をお腹に詰め込み、南十字星を眺めつつ波に揺られて独り寝としゃれた。気楽な毎日であったが、ちょっぴり寂しくもあり、恋にときめく歳になってきた。

(2) 恋

初めて彼女を見たのは海の奥深く大好物のイカを追って行った時だった。昼なお暗い海の奥深く、蛍光色に光り輝くイカを追っていた。まさにイカに追いつき、採ったと思った瞬間、そばから音もなく猛烈なスピードで追い越したかと思ったら、イカをかっさらったペンギンがいた。横取りされむかっときて文句を言おうとして、顔を見た。とたん精悍さの中にも気品のある顔に圧倒され何も言えず、しょんぼりと海面に浮かんでいった。その間、何を考えていたのか、ショックのあまり、記憶にない。髪はリーゼンに決め、金色の髪飾りを風になびかせて、格好よく岩の間を飛び回っている自分が持てないわけないと思っていた。実際、多くの女の子に声をかけられ、散歩はしたけれど、何となくそのままになっていて、積極的になれる彼女はいなかった。
次に彼女に会ったのは夏(南半球では夏が寒い)が終わり、ひさしぶりに雲もない晴天の秋の朝だった。岩をピヨンピヨン跳んで海に行こうとした時だった。ふと胸騒ぎがして斜め後ろを振り返ると、丁度彼女も海に向かおうと岩をジャンプしていた。
一緒に海に入らないかと声をかけると、ぶっきらぼうだけど、思いがけず「良いわよ」との声が返ってきた。海の中では魚の追いかけっこになった。陸上での岩跳びは遥かに僕がうまいのだけど、水の中の動きでは彼女の方が敏捷で、魚採りもうまかった。海の奥深くに潜って、一気に上昇してきて、魚をとる技はとりわけすばらしかった。2人が協力して、一人が魚を追い込み、一人が採るといとも簡単に魚が捕れた。調子に乗って何匹も何匹も魚を捕った。相性の良さはこの上ない。急速に仲良しになり、一緒に魚採りに出かける日が増してきた。ある時は海辺の岩の上に立ち2人して大きな夕陽が海の向こうに沈んでいくのを無言で眺めていた。水平線に真紅の太陽が沈みかけると、あちこちの氷山に残光があたり、赤やオレンジや紫の反射となって飛び散り、光のファンタジーショウが始まる。波も金色の光を浴びて飛び散る。海全体が光の反射を受けてきらきらと輝きだす。夕日が落ちると、今度は天空いっぱいが紅赤色に染まり、雲の端が金色に光り輝きはじめ、海面は次第に黒々としてくる。やがて、壮大なる光のショウも終わり、空も紫色から薄墨色へとかわり、闇の帳が支配し始め、漆黒の闇に代わる。それを待ちかねた様に天空では星々のきらめきのショウが開始する。そんな中、おなか一杯の魚をもって、2人は巣への帰路を急いだものだった。

またある時は遠くの島まで魚を求め、幾日も泳いでいった。ただ2人でいることだけで幸せだった。日が暮れて漆黒の闇が二人をとりまいても、フリッパーに触れて光る夜光虫の蛍光が、あたりをほの明るく照らし出し、道に迷うことはなかった。夜空を跳ぶ自分たちのシルエットが夜光虫の滴りで輝く。いつしかその光も、水平線から覗いた太陽で色あせる頃、小さな島に着いた。島の周りは人間が手をつけていない、荒らされてない自然が残り、好物の魚たちも群れになって泳いでいた。島には、なにより、小さな湾の奥に休むには絶好の平らな岩棚が波打ち際にあり、おおきな図体のアザラシ達もゆったりと寝そべっていた。二人は心置きなく魚を追い求め、疲れると岩棚の上で休憩した。そんな日々が1-2年も続いただろうか。

(3) 結婚

秋が行きかけているある日。ついに2人はお互いに向かい合って、フリパーをパタパタと打ち鳴らし、くちばしを空に向け大きな声で結婚の誓いをした。僕は島の中腹の岩陰の窪地を掘り、小石を運んで新居を作った。2人の家は狭く,雨風を完全には防げなかったけれど幸せそのものだった。すぐに2人の卵が産まれ、僕と彼女で交互に大切に1ヶ月あまり抱きかかえた。すると殻の内側から最初は弱々しく、次第に力強く殻をつつく音が聞こえ、ついには殻を打ち破り、かわいい産毛の子が誕生した。それからが夫婦にとって大変。なにしろいつもお腹をすかして餌をねだる。交代で海に出て、お腹いっぱいにして帰って来て、お腹の魚を戻して子供に与えるのだけど、くちばしをつついて催促する食欲は限りない。一人が巣を守り、一人が海に出て餌をとったのでは追いつかなくなると、そのような幼児ばかりが集められた、クレイシュという託児所に預けて二人して餌を採りに海に出た。クレイシュの何百の幼児の中から我が子を見つけ出すのは大変。鳴き声と匂いとを目指して我が子に巡り会い、餌を口移しであげて、また海にでる。これの繰り返しが2ヶ月近く続いた。しかしある日を境に、次々に本能によって海に導かれるかの様に、幼いペンギンは海を目指して、巣だっていった。我が子も海際で少し躊躇さをみせ、後ろを振り返ったが、海へとジャンプし、海の彼方に仲間達と巣立っていった。

 そんな繰り返しが何年も続き、何事もない日常が淡々と過ぎていった。そんな平凡な日常が一番幸せだった日々だと分かったのはずーっと後になってからだった。10年も経っただろうか。我々夫婦もすっかりベテランとなり、やっと落ち着いて子育てもできるようになってきた。巣立ったペンギンは本能の赴くまま、多くの雛ペンギンと沖を目指して次から次へとくりだす。あの頃は,毎年多くの卵が孵り、巣立ちも実に騒がしいものだった。
しかし、そのような穏やかな日々は長く続くことはなかった。

(4) 人間の出現

 ある時を境に、次から次へと多くの人間がわれわれの住む島にやってきて、油を採るためにクジラだけでなく我々をも乱獲した。その殺戮はほどなく禁止されたが、やがて人間がやって来るばかりか、住み着く様になった。その結果、人間と一緒にやってきた病原菌と犬や猫,羊が確実に我々の生活をうばった。特に免疫のない病原菌により、多くのペンギンがばたばたと死んでいった。また人間は何かと理由をつけては牧場を広げたため、われわれの住むところは犬の来れない崖の中腹に狭められていった。ペンギンの子供の数はあっという間に激減し、若い夫婦も少なくなってしまった。それに最近では傲慢で、欲が深く、恥知らずの人間は我々の住処を荒らすばかりか、とうとう地球までも破壊し始めた。その影響で地球全体が温暖化に向かい、南極近海の海水温が上昇したため魚の群れが遠くに行ってしまった。その結果、大好きだったオキアミやイカもこの附近の海域からめっきりその姿が減ってきた。それでもまだ我々夫婦はどうにか飢えることなく小さな島の小さな岩陰でひっそりと人間におびえ、犬におびえてくらしていけた。

(5) 天候不順

 人間が我々の島の周りに出現し始めるのと比例して、次第に天候不順な日が多くなり始めた。冬には気温が異常に上昇し、棚氷も溶けて、南極とも思えない温かい冬が続くことが稀ではなくなってきた。われわれペンギンの身体は寒いのにはヘッチャラだけど、暑さには耐えられない。そんな気候で、冬の暑さに多くのペンギンが亡くなったかと思うと、夏にもその気温の上昇が我々に襲いかかった。夏に降るべき雪が降らず、雨が降った。またあたりの氷も溶けて、幼児の保育所のクレイシュを水浸しにした。大人のフリッパーは水を弾くようになっている。幼児の羽毛は体温を寒さから守るための防寒具だけど、それが逆に水を吸って、体温をうばい、多くの子供が息を引き取った。幸いにも私たちの子は、雨に打たれて肺炎になったが、奇跡的に回復して無事旅立ちを迎えることができた。


(6) 不幸の始まり

 あれは突然の出来事であった。波打ち際で旅立ちを迎えて、泳いでいた子供に大きな影が近寄る間もなく、その影が突然波間から現れ、大きな口の中に飲み込まれていってしまった。大きな,大きな黒くてお腹が真っ白なシャチであった。余りにも突然の出来事で、無声映画の駒送りのシーンのように、ワンカット、ワンカットがゆっくりと流れていき、声もでず、手足も動かなかった。時間からいえばほんの数秒であったか数十秒であったにもかかわらず,永遠のように感じられた。音のないモノトーンの写真の中の出来事のようであった。

それから長い月日が経ったようにも思えるが、実際にどのくらい経ったかは覚えていない。ただひたすら忘れようと一日中海に潜り、魚を追っかけ、海流にも乗り遥か地球の彼方へといってみたりもした。何度も死のうと考えた。しかし生きながらえた。天が命を奪うまで生きようときめた。子供の分まで生きようと決めた。それでも心の傷はいやされることはなく,悪夢となって度々あの光景が現れた。夢の中で声を上げて泣いていると、その自分に気づいて、目が覚めた。それでも次第に月日が経つと、悪夢は茫洋とした大海の景色の中に封じ込められていった。現実から逃避し、魚採りでいやなことから逃げていると、世の中の移り変わりや妻のこと等も気にかける余裕がなかった。
妻の気持ちは離れていき、少し精神も壊れかかっていった。非常に感情が高ぶったかと思えば、すぐに落ち込み感情のコントロールができず、潔癖になりすぎ、寛容さがうしなわれてきているようだった。そんな妻にどうしようもせず、慰めの声をかけるでもなく心が離れたまま、月日が過ぎていった。それでもどうにか、表面的な日常生活は送っていた。海の彼方へ沈んでいく夕陽を眺めながら、日が落ちて、夜の帳が支配する間の残光によって照らし出された夕焼け雲をみながら、心を落ち着かせ,昔のあの美しかった自然一杯の夕日を思い浮かべながら、暗闇の中を巣へ帰っていくだけの気力はお互いに残っていた。

(7) 自然破壊

 天候のくるいも次第に顕著になってきた。 いつもなら雪が降り氷が厚くなり、氷棚の張る夏にも関わらず、土砂降りの雨が降ったり、異常に高温の日が続くことがまれではなくなってきた。冬には晴れ渡った晴天の日がなく、長雨が続き、風やインフルエンザと言った感染症が蔓延し、大勢の幼いペンギンや年老いたペンギンの命を奪った。海岸にはプラスチック製のボトルや発泡スチロールの破片が大量に流れ着いた。昼間の海中でみるとそれはきらきらと光り、多くのペンギンはイカと間違えプラスチックを飲み込んでしまい,消化できず亡くなっていった。私の妻もイカと思って飲み込んだ発泡スチロールがのどにつまり、苦しがってあっという間にあの世にいってしまった。彼女にとってみれば生きて地獄を見るよりも幸せだったかもしれない。あれほど大勢いた仲間達が人に狩られ、営巣地を牧場にされ、犬や猫に追いかけられ、はたまた人の持ち込んだ病原菌に壊滅的に数を減らしていった。人間は地球に炭酸ガスや過酸化ガスをまき散らし、そのせいでオゾン層が破壊され、多くのペンギンが白内障になりがんとなって死んでいった。さらに追い討ちをかけたのは、その結果生じてきた地球温暖化による影響であった。温暖化による海水温の上昇、異常気象の多発により、オキアミやイカなど餌があれほど豊富だった海から消えてしまった。その結果、多くの弱い子供や年老いたペンギンが次々に餓死していった。

(9) 孤独な ペンペン

 気づいてみると生き残っているのは年老いた自分を含め、わずかなペンギンだけとなってしまった。
ペンペンには蒼く澄み切った冬の空を眺めながら、何が地球で起こっているのか理解できないでいた。そして一人で沈み行く太陽を見つめつつ,夏には氷が張り出し、雪が降り、寒い寒いと凍えてくらした日々や岩場に生えた草むらの陰で、大勢のペンギンたちが巣創りや子育てに励んでいた冬の日々を思い出していた。夕陽が沈み、あたりが漆黒の闇に覆われても立ち尽くし回想に浸る毎日であった。それでもペンペンは死が訪れるまでは生きていこうと誓った以上、懸命に生きることにした。

一人ぽっちになって、ペンペンは薄くなってしまった金髪のリーゼンをかき分け、ぼろぼろになったつけ髪をいじりながら、見えなくなってきた目で、遠い海をながめ、薄れ行く気力のなかで、楽しかった日々を脳裏に浮かべていた。我々はいったい何か悪いことをしたのだろうか?神の摂理に反することをしただろうか?なんでこのような仕打ちをペンギンが受け、絶滅の危機に曝されなければならないのだろうか?と考えながら夕日の見える岩の上で薄れ行く気持の中で、これでやっと妻や子や仲間たちに会うことができるとの安心感が胸一杯に広がった。
            「Super PenPenの独り言」


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