スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

楠と悠久

2009年11月16日 18:00

しばしの別れ

雨上がりの朝。厚い雲が残り、また泣き出しそうな秋の空。車の前面に見える山の頂きに一瞬厚い雲間から一条の陽光があたる。折しも、赤や黄や焦茶のまだら模様に染まりかけた山の頂きの、陽のあたる箇所だけが切り取られた絵画のように浮かび上がる。たちまち,陽は雲に遮られ、山は元のくすんだ衣に舞い戻る。

楠の老木は相変わらず緑濃い葉を天空に風になびかせ、寒さと共にに去っていくとなりの落葉樹を見て、しばしの別れを惜しむように物悲しい葉ずれの音をだす。

友は葉を木枯らしに一斉に舞い散らし、坂道を埋め尽くす。弱々しい陽光の射す、落ち葉の絨毯を敷いた坂道を、子供が、学生が、恋人達が行き交う。

ああしばしの別れ。僕たち、楠は友の去った街路に残り、ジングルベルにはしゃぐ子供達の声を聞き、忘年会帰りの酔っぱらいの叫びを聞き、師走の寒空にそっと肩を寄せ合う恋人達の姿を見守る。

最後の北風が残った衣をすっかりはぎ取り、友は裸の枝を寒空にさらす。吹き寄せられた枯葉はふきだまりで、かさこそと音を立て、寒い朝を足早に急ぐ人に踏みつけられ、砕かれる。

ああしばしの別れ。「僕はここで、みんなが帰ってくる春を待っているよ。暖かい陽光の中、みんなで楽しく語り合える春を待っているよ」

そのうち白いものが天空から舞い降りると、僕も真っ白な綿帽子をかぶり、ちょっぴりとおしゃれをする。楠の坂道には雪に戯れる子供達の歓声が聞かれ、大人は足を滑らせないようにそっと坂道を下る。

降る雪もまばらに、寒さ和らぎ、ぽかぽか陽気に誘われ、友が帰って来る。仄かな緑の芽を出したかと思う間もなく、葉を伸ばし、白やピンクの花々を咲かす。「やあ久しぶり、元気かい。元気で帰って来てくれて、またにぎやかな街路になったよ」

ランドセルをしょった子供達が坂道を駆け上っていく。老人達は陽気に誘われ腰を伸ばし、新緑の街路樹を見上げ、新たな生命の息吹きを楽しむ。

楠の老木は悠久の時をここで生き、繰り返えされる自然界の生命のドラマを、坂道で起こる人間のドラマを、ずーと見守っている。

楠の詩人 penpen

スポンサーサイト


最近の記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。