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科学におけるねつ造事件

2010年01月29日 19:03

捏造

何故科学的データをねじ曲げたり、ありもしないデータをばれる事が分かっているのに捏造するのだろう。現在の科学者が大きな発見をすると、一躍マスコミが取り上げ、研究費も豊富に、地位も名声も得るというスタイルができあがっているからなのであろうか。論文の捏造は主に、情熱に溢れ、やるきが旺盛で、名誉欲の強い人物が犯す傾向にある。
まだ耳に新しく、社会を騒がした捏造事件について触れてみたい。

1. 旧石器捏造事件

日本には石器時代の今から3万年前頃に人類が住み着き生活し始めたと、遺跡の発掘石器などから推定されていた。しかしアマチュア考古学者藤村新一はそれよりも遥かに古い4万数千年前の地層から石器を発見し、日本国中を驚かせた。それを皮切りに、次々とさらに古い地層から石器が出土され、40万年前、上高森遺跡ではなんと60万年前の地層から石器を発掘した。
北京原人に匹敵する古さで、もうその当時から日本に原人が住んでいたのかと騒がれた。
しかしそれら日本の前期・中期旧石器時代の遺物や遺跡だとされていたものが、全て捏造だったと発覚したのが旧石器捏造事件である。

藤村新一は江合川流域の石器を中心とした調査を始め、1975年にはこの時の仲間を主力とする石器文化談話会が結成され、石器探しの名人として活動した。仲間内では「ゴッドハンド」の異名を馳せた。捏造事件発覚まで、藤村は旧石器時代の上限を十万年単位で遡らせるとされた発見・研究報告を次々とあげ、日本の前期・中期旧石器時代研究のトップグループの一人と見なされていた。

ゴッドハンドとはいえあまりにも次々と、それも一人で、古い石器を発掘し、さらに発掘現場での藤村の不審な行動に疑念を持った人からの情報提供に基づき、毎日新聞北海道支社がチームを編成しての取材に着手した。藤村が参加している発掘の現場に張り込みを行い、あらかじめ遺跡に石器を仕込んでいるところの写真・ビデオ撮影に成功した。その後、直接の取材と捏造の確認を経て、2000年11月5日の朝刊で報じた。それが発端となり、それまでの業績の一部が捏造であることが明らかとなった。その後、業績のほとんどが捏造であることが判明し、日本からは確実と言える前期・中期旧石器時代の遺跡が消滅してしまった。

なぜもこんなにやすやすと多くの専門家の目をすり抜けて、捏造が続けられたのか。その底には、日本人の日本の考古学への憧れがあり、日本びいきの国民とそれを後押しするマスコミが更にそれを助長し、この日本列島にも北京原人が暮していた頃に、もう原人が居たんだと誇りに思って、疑いの心を挟まなかったせいかもしれない。社会が望む方向に藤村は結果をもっていったため、やすやすと捏造を行う事ができた。

2. ES 細胞論文捏造事件

黄禹錫(ファン・ウソク)は世界レベルのクローン研究者とされ、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の研究を世界で初めて成功させたと報告し、注目を集めた。韓国人で自然科学部門では初のノーベル賞を期待され、韓国政府や韓国国民の期待を一身に集め「韓国の誇り」と称された。しかしそれらの成果は全て捏造であったことが2005年末に発覚した。

事の起こりの経緯はこうだ。
黄禹錫は2004年2月に体細胞由来のヒトクローン胚からES細胞を作製することに世界で初めて成功したと発表した(Science 2004年3月12日号)。それまでヒツジ、ウシなどの哺乳類においては体細胞由来クローン技術はある程度確立されていた。しかし、ヒトはおろか、サルなどの霊長類においてすら体細胞由来クローンの成功例はなく、世界中の生物学会を驚愕させた。
2005年5月には患者の皮膚組織から得た体細胞をクローニングして、そこから患者ごとにカスタマイズされたES細胞11個を作製したと発表した(Science 2005年6月17日号)。この際に使用した卵子が184個に過ぎないという異常な効率のよさも脚光を浴び、技術の実用化への可能性が高まったとされた。

しかし2005年11月10日になって、2005年論文の共著者の一人である米ピッツバーグ大学のジェラルド・シャッテン教授が、ソウル大学黄禹錫教授が卵子を「違法に入手している」とメディアに公表したのが発端となり、研究対象となる卵子を入手した方法が倫理基準に照らして問題があることが判明しスキャンダルとなった。更に論文に添付された培養細胞の写真が2個を11個に水増しした虚偽のものであった(本人はコピーミスとしている)ことが問題となった。
2005年12月15日、卵子提供で協力関係にあり、黄教授とともにES細胞の論文を発表した盧聖一・ミズメディ病院理事長が韓国文化放送(MBC)テレビのインタビューで「黄教授の論文の内容が虚偽だった」事実を明らかにした。これによりScience誌で発表された論文のES細胞に対する疑惑が高まり、その後の調査の過程で完全な捏造であることが確定し、サイエンスに発表されたES細胞に関する2つの論文(2004年2月・2005年5月)は、2006年1月にすべて撤回された。この事件により、『クローニングによってES細胞の製造ができる』という前提のもとに行われていた研究はすべて二度と立ち上がれないような打撃を受けた。

この事件も韓国の黄禹錫教授への期待の高さや国民英雄的待遇で、黄禹錫教授ならやってくれるだろう、ノーベル賞を取ってくれるだろうとの過剰の期待の重みから、逃れられずにおこった事件かもしれない。

科学で大切な事は、面白いに超した事はないが、面白くなくても事実をありのまま記すこと、そこに自分の主観を入れたり、データをねじ曲げては行けない。しかし、自分の主観的アイデアから実験を初めて、それを客観的に科学的に証明する事は研究にとって非常に大切な事である。

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