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グローバルな世界における日本の科学

2010年06月14日 17:49

Japanese Science in a Global World (グローバルな世界における日本の科学)

     Arai Ken-ichi (新井賢一)Science 328, 1207 (2010)

新井賢一先生(元東大医科研所長, 現President of Asia-Pacific International Molecular Biology Network)が
Science のEditorialの巻頭言で日本のこれから採るべき科学政策について論じている。

日本はここ20年間ぱっとしない成長であったが、2010年の年頭経済的にはちょっぴり明るいニュースがもたらされた。依然、国の負債は大きく、デフレが重大な問題としてのしかかっているが、世界で2番目の経済大国の経済が2009年末の四半期において成長に転じたことである。しかしそれは日本が長期的に回復基調に入ったことを意味していない。2011年度の科学予算のカットはそれ程厳しくはなかったが、いやな兆候は政府が日本の科学のインフラへの投資を凍結し、地球科学や気象学その他の領域への支出を、これらの試みは著名な科学者達によって阻止はされたが、減らそうとしていることである。政策立案者に科学技術への投資を促進しようとする意識が無いために、間違った方向の考えが生まれる。それゆえ、研究者が国の科学政策形成に率先して関与し、若い科学者を国際社会のネットワークに導いて、国際社会での経済的な成功を支援する必要があることに気づき始めた。

第2次大戦後、日本はたくましい経済を、工業生産に集中することで作り上げて来た。しかし商品への世界的な需要が急激に冷え込み、バブルが崩壊し、科学、技術、工業における古い組織構造の改革に失敗して、日本は1990年代に経済危機に陥った。その結果、起業やベンチャーを通しての急速な対応ができなかった。自由民主党に率いられた日本政府は科学や工業の改革を試みた。目標は博士課程の学生やポスドクを増やして目的志向型のプロジェクトを増やして新たな産業を興す事にあった。
その結果、博士過程の学生やポスドクの数や一流誌への成果の発表は増えた。しかしながら、トップダウンの決定による目的志向型の大型サイエンスへの移行が起こり、わずかな少数の大型プロジェクトに予算が集中することとなった。そして多くの個人科学者や小さいがより焦点をしぼって努力している研究者には予算が廻らず、ごくわずかな一部の研究者にのみ予算が配分される事になった。これらの事は今日の若い研究者にトップダウン方式での研究環境ではキャリヤーパス構築ができないことを認識させる事となり、最近の日本の博士課程卒業者が外国に行き、専門性や教育的見地を広げ、共同研究関係を作り出すことをしなくなることに繋がった。1960年代から1990年代にかけて、多くの日本人研究者がポスドクのトレイニングに北アメリカやヨーロッパに行った。今日、若い日本の研究者は就職難に遭遇し、留学したら日本に帰れない可能性におびえている。理由はどうあれ、若い研究者が内向きの姿勢になり、強い国際的科学ネットワークを作りたがらない。一方で、他のアジア各国、とりわけ中国、インド、韓国、マレイシア、シンガポール、タイなどは精力的にそのようなつながりを強めようとしている。

以前の日本政府が改革しようとした目的は、結局成功しなかったけど、国籍や性および歳に関係無しに、キャリアー構築への国際的なパスをサポートする開かれた研究システムを構築して、若い研究者に独立を与える事であった。研究者が独自の興味を自由に追い求める事のできる科学技術の開かれたボトムアップ方式のプラットホームにおいてこそ、目標を追求する事が他の国、特にアジア諸国と交換可能なキャリアーパスを構築することに繋がるであろう。そのような柔軟な研究のインフラが多くのアジア諸国の間で機会を共有することを可能にするであろうし、健康、食糧、エネルギーおよび環境という共通の問題に取り組むのを助けることのもなるであろう。

昨年の選挙で民主党が勝利したが、鳩山首相の科学政策は当初明らかではなかった。今日、新しい政府がゲノムや幹細胞研究、バイオテックベンチャーやグリーン技術プログラム研究を促進して行きたいと表明した事は喜ばしいことである。しかし、経済回復が滞ることにでもなれば、科学技術は厳しい予算削減に見舞われるであろう。よって科学者はグローバルな経験を積ませ、革新的な研究者を産み出すのを支援するためには、日本を持続的に成長に導くような政策に直接投資するように、政策決定者と議論していかなければならない。

新井先生が言っているポイントを挙げると
1 トップダウンの決定による少数の研究者にのみ予算が集中している。
2 不景気が長く続いたため若い研究者が内向きになり、海外との交流を好まなくなった。
3 アジア諸国と協調して国際的に通用するキャリアーパスを構築する必要がある。
4 科学者が積極的に日本の経済を伸ばす方向の科学技術への投資を行うよう政策決定者と議論しなければならない。

確かにその通りであり、このような議論はもう10年以上にわたってつづけられてきた。しかし何一つ変わっていないというより、研究環境が益々悪くなっている。これは政府(役人?)が科学政策をコントロールしようとして、同じような大型プロジェクトをいくつも立ち上げたことによる弊害が大きい。一応は一般競争原理によるファンドの形をとってはいるが、研究領域、応用性や歳などいろんな制限がかけられ、自由には応募できないシステムになっている。その結果実際に自由に応募できるグラントが減ってしまった。このような窮屈な研究環境を続けていると、優秀で積極的な若い研究者は海外で研究する事を選ぶようになるであろうし、一方、内向きの消極的な研究者は益々研究費がとれず、研究もできず、研究者間での格差が益々広がって行く事であろう。

ああーどないしたらいいんや。

     
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