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巨大製薬企業は研究開発を減らし、ビジネスで儲けようとする

2011年02月21日 17:41

巨大製薬企業は今後研究費を大幅に削減する

Pfizer’s shakeup means less money for research
          Science 331, 658 (2011)

巨大製薬会社ファイザーは2012年に数千人の労働者を解雇し、研究開発費を15から20億ドル削減すると発表した。この急激な減少は「基礎的な薬剤探索においてどのような役割をはたすべきなのか、またはどのような役割を果たしたいのか」多くの巨大製薬会社が直面している不確かさを反映している。一方、外部から必要な時に必要とする科学技術を買うことが増えてきている。ファイザー社の研究開発予算は2010年には93億ドルであったが、本年は85億ドルに減少し、2012年には65億ドルから70億ドルに削減され、内科、アレルギーや呼吸器病、泌尿器や組織再生への研究投資は中止される。ファイザー社幹部はこれらの領域はriskyで、利益を生む薬を作りにくいと見ている。反対に、神経科学、がん、ワクチンなどへの研究費はそのままか、増える。

ファイザーは投資をやめる領域の薬の販売を必ずしも止める訳ではない。研究開発部門の総責任者であるMikael Dolstenはこう述べている。「薬を会社内でのみ作ろうと思っていない。勝てると思う場所、自分に都合のいい場所でやればいい」。予算の執行を受けて、ファイザー社はバイアグラを開発した工場で2400人の労働者のいる英国のサンドイッチの工場を閉鎖する。数百人の雇用者はどこかに移動するか外部の関連企業に移る事になるであろう。ファイザー社は更にコネチカットのGrotonのオフィスの1100の仕事を止め、450の仕事をマサチュセッツのCambridgeに移す。

「ファイザーだけが最近病気のメカニズムの解明が進んだ神経科学のような特定の領域に力をいれ、内科のような広範な領域から撤退しているのではない」と以前のNovartisの幹部で現在のConcordにあるがんに特化した会社Kew GroupのCEOのJeffrey Eltonは述べている。大きな病気の領域は薬の認可審査を通すのが非常に難しい。「研究費カットの精神はより少ない研究でより多くのビジネスを行なうことだ」と言う。ビジネスがファイザー社の最も重要な精神のようだ。ブロックバスター薬(非常に多くの売り上げを誇っている薬、通常1000億円以上)のコレステロール低下剤のLipitorの権利が今年で消滅する。10年前には売り上げの50%に及んでいたが現在では15%に落ちている。実際、製薬企業は新たな薬の開発が少なくなってきていることなどより、財政的な圧力に直面している。このような条件下ではより有望な研究でさえ中止される。11月にロッシュ社は3年間で4億ドル費やした後、RNA干渉研究部門をなくした。
どの研究に投資するかの決定は大きいか小さいかなどの会社の力にもよる。 Dolstenは「薬を開発したいと思うある領域があっても、その開発は自分でやるより特殊なすきまを狙う小さな会社と共同した方がいいと決断するであろう」と述べている。

共同研究、特にアカデミーの研究者との共同研究を望むのはファイザーがなぜSandwichオフィスを閉じたかを説明している。その閉鎖は英国政府にショックをあたえ、国会議員はその決定に対し質問をした。その移動はEltonをも驚かせた。なぜなら米国のように英国政府も基礎研究を重視して投資しているからだ。しかし英国の民間のバイオテク産業は米国に比して小さく、起業が少なく、共同研究が限られている。

それに反し、ファイザー社が研究施設を作ろうと計画している、Cambridgeは多くの小さなバイオテック会社が集中し、有能な人材を持ったトップの大学と近い。1990年の後半から、殆どの主要な製薬企業はCambridge近郊にオフィスを持った。ファイザー社もカルフォルニア大学、サンフランシスコ校医学部や7つのNew Yorkの医療機関と提携した。

要するに、ファイザーや関連会社は研究開発を外注し始めたということだ。彼らは基礎研究は金がかかり失敗の可能性が高いので、その一部のみに集中して研究開発する事にした。とTufts大学の創薬研究センター所長のKenneth Kaitinは言っている。多くの場合、大きな製薬企業をハングリーな状態にさせ、他の機関に生物学的背景を調べさせ有望なリード化合物を見つけ出さすほうが、単純に経済的である。
製薬企業は今日外注に対してそんなに苦慮していない。Eli Lillyは2008年に動物毒性実験を外注し始めた。Wyeth(2009年にファイザーに買収)は臨床試験のデータ管理を2003年に外注した。2007年、AstraZenecaは多くの活性化合物の生産を中国に移した。製薬企業がなにもせず、いい薬の候補をすくいだし、販売するという管理のみをするようになる日が来るかもしれない。Dolstenはファイザーサイズの大きな会社が内部の研究開発スタッフのみから利益をあげうるとは思っていない。Marketingやfundingを行なうのみならず、研究開発の技術を売ることも望んでいる。これがcriticalな要素だ。

Kaitinは言う「自然に道路を歩くように、会社はさらりと外注を始め出し今までやっていた研究を止める。」そして更に付け加える「多くの人々の意識を驚かせる。われわれは研究室のベンチからのみ薬局の棚に並ぶ薬剤を作る事ができると長い間思っていた。しかし、財政的圧力が高まるにつれ、多くの伝統的な分子のゆりかごから分子の墓場までを行なって来た会社は基礎的な科学を自社でおこなう必要がますますなくなると思うようになってきた。

新薬の開発にかかる研究開発費が膨大になり、すべての領域をカバーすることが不可能になった今、製薬企業は開発領域を絞り、できるだけお金をかけないで、中枢でない仕事は外注で切り抜けようとしている。そして外部の小さな会社や大学の研究者が有望なものを発見するとそれを買い取り、開発するという方向に進んでいる。その精神は自社での研究開発は程々にしてよりビジネスで儲けようと言う魂胆だ。

何もかも効率が優先され、riskyな基礎研究には投資しなくなって行く傾向が益々著明になっている。日本の研究開発費も名目は基礎研究の予算で、その額は増えているけれど、実態はひも付きの応用を目指した予算だ。ひも付きでない基礎研究予算の獲得は厳しい競争に晒され、獲得が年々難しくなっている。競争的研究費の獲得に当たり、審査員に全く領域とは異なる分野の人や企業の人が多く、それはそれで公平さを言う意味ではいいのだが、すぐに役立つ研究を求める。これでは基礎研究は成り立たない。基礎研究者も何らかの応用研究をしながら細々と今までの研究を続けるという我慢をしなければならない事態を招いている。

今までの日本の良さは貧しくとも自由に好きな研究ができ、長期展望が持てたことで、アメリカの様に短期に成果をあげないと首になるというびくびくしながらの綱渡り研究ではなかったことである。しかし、いまや若い研究者を見ていると短期の任期付き雇用で、不安要素を抱えながらの研究で、腰を据えて研究できない。いつからこんな情けない日本になってしまったのであろう。これで基礎研究を重視していると思っている政治家やお役人の頭はどうにかしている。アメリカ的な会社経営が日本に向かないように、アメリカ的な研究方式が日本に向くとは限らない。
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