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女王蜂誕生の仕組み

2011年05月27日 17:43

女王蜂になるか働き蜂になるかの運命

ミツバチは女王蜂と働き蜂からなる階級社会を構築し、幼虫の頃にロイヤルゼリーを摂取した個体のみが女王蜂へと分化することが知られている。女王蜂は働き蜂に比べ、体のサイズが1.5倍、寿命が20倍で一日に卵を2000個産むという特徴を持っている。しかしどのようにして女王蜂に分化するのかは全く分かっていなかった。

最近、その仕組みが富山県立大学の鎌倉昌樹氏よって解明され単独名でNature 473, 478-483 (2011)に「Royalactin induces queen differentiation in honeybees」として掲載された。
鎌倉氏はロイヤルゼリー中のRoyalactin(ロイヤラクチン)という57 kDaの蛋白質が女王蜂に分化させる因子であることを突き止めさらに、その機序についても明らかにした。ロイヤルゼリー中の女王蜂誘導因子を同定するにあたり、フレッシュなロイヤルゼリーは女王蜂を誘導できるが40度で30日間保存するとその効果が完全に消失し、働き蜂にしかならないことに目をつけ、フレシュなロイヤルゼリー中に存在し、保存で消失するものを探し、ロイヤラクチンにたどり着いた。

面白い事にロイヤラクチンをショウジョウバエに投与しても同様に体サイズ,産卵数の増加や寿命の増加が見られた。ショウジョウバエを使うことによって実験が容易になり、分化を導くシグナルを簡単に調べる事ができた。
これまで体のサイズや寿命を規定するシグナルとして中心的な役割を果たすのはインスリン受容体/PI 3-kinaseだと考えられて来た。しかし今回の結果はロイヤラクチンはインスリン受容体を介さず、脂肪体の上皮増殖因子受容体(EGFR)に作用し,その下流シグナルを活性化して作用発現に至るという事を明らかにした。

更にはインスリンシグナルで主に働くPI 3-kinaseの下流で活性化されるPDK1や、EGFRの活性化で主に働くMAPKの下流で、活性化されるp70S6-kinaseを介して細胞のサイズを増加させ、体のサイズを増加させていることを突き止めた。実際にミツバチに於いても同様の機序で働いていることをシグナル蛋白質をノックダウンして確かめる実験もしている。

たった一人で昔より不思議だと思われていた、女王蜂になるか働き蜂になるかの運命決定の仕組みを明らかにした。この事実は大きな組織で、共同して実験しないとなかなかいいジャーナルに載せるに十分な信頼性が高く、大量のデータを出せないとの考えを打ち砕く衝撃があった。まだまだ、より生物学に近いテーマであれば分子生物学的手法を駆使しなくてもできる面白いテーマが未解決のまま残り、インパクトの高いテーマであればそれ程膨大なデータを必要とされないことを思い知らされた。用はお金がなくとも、マンパワーが無くとも専門を越えて面白い生命現象であればまだまだ勝負できる領域があることを意味している。
金がない,人がいないは言い訳に過ぎない? 反省しきりのPenpen。
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