スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

インパクトファクター騒動

2011年07月02日 14:04

今年もまたインパクトファクター(2010年)の発表があった。ジャーナルにとってみればどれだけインパクトファクターが取れるかは重大で、それによってジャーナルのステータスが決まるくらいの大関心事である。
しかしふたを開けてみれば、今年の傾向は代わり映えもせず、Nature, Cell, Scienceの御三誌が圧勝し、NatureとCellの姉妹紙がそれに続くという形であった。
それだけでは面白くないので、深く掘り下げ、どのジャーナルがインパクトファクター(IF)を伸ばし、どのジャーナルが減少させているのかを比較し、どの研究領域が将来有望なのかなど、IFから見た研究のトレンドを調べた。

全体的に見て、主要なジャーナルはいずれもIFを昨年より2ポイント近く伸ばしている。今年もNew England J Med (IF:53.484)を筆頭にNat Genet (37.377), Nature (36.101), Lancet (33.633), Cell (32.401), Science (31.364), Nat Biotech (31.085)が30以上で Cancer Cell (26.925), Cell Stem Cell (25.943), Nat Immunol (25.668), Nat Med (25.43), Immunity (24.221), Nat Method (20.717)と続き、20から10の間にはNat Cell Biol (19.407), Cell Metabol (18.207), Nat Chem Biol (15.808) Pros Med (15.617) J Exp Med (14.776) Mol Cell (14.194) Nat Neurosci (14.191), Neuron (14.027), Dev Cell (13.946), Gene Dev (12.889) が入りEMBO J (10.124) は10以上に返り咲き, Curr Biol (10.025)までが10以上でJ Cell Biol (9.921), ProNAS (9.771)は残念ながら10に届かず, Cancer Res (8.234), EMBO Rep (7.522), Oncogene (7.414), Development (6.898), FASEB J (6.515), J Cell Sci (6.29), Mol Cell Biol (6.188), Mol Biol Cell (5.861), J Biol Chem (5.328)と続く。

まずは御三誌の比較。Nature, Cell, Scienceを比較してここ5年間で一番IFを伸ばしたのはNatureで2006年に29.601であったのが2010年には36.101と6.5ポイント伸ばした。一方、Cellは29.194から32.401で3.207ポイント伸ばし、Scienceは30.028から31.361と1.333ポイントの微増であった。ここ5年で著しくIFを伸ばしたのはNat Genetで24.176から36.377へ12.201ポイント上昇、Nat Biotechは22.672から31.085へと8.413ポイント、Cell Stem Cellは3年前に発刊された時のIFが16.826であったのが25.943へと9.117ポイント伸ばし大躍進。 Nat Methodが14.969から20.717へ(5.748ポイント)と、Immunityが18.306から24.221へ(5.915ポイント)と中躍進。主要なジャーナルが軒並み伸ばしているのに対し、反対に落ちたのはNat Med が28.588から25.430へ、Gene Devが15.051から12.889と減少傾向。
今後発展して行くだろう研究領域としては、唯一Nature本誌よりも高いIFを誇るNature Genet (37.377)の伸びからも分かるように、①疾病関連の遺伝子の解析、エピジェネテックスやmiRNAなどをあつかう遺伝子解析の領域や②Cell Stem Cell (25.943) の様にES細胞、iPSなどを扱う幹細胞、再生医療関係や③Nat Biotech (31.085)やNat Method (25.43)のように新しい技術開発を扱う領域が挙げられる.
 免疫関係はImmunity (24.221)は伸びているがNat Immunol (25.668)やJ Exp Med (14.776)などは横ばいで全体としては横ばいか? Nat Neurosci (14.191)やNeuron (14.027)などは免疫系に比して全体的に低く、脳、神経系のジャーナルのIFは伸び悩み。Dev Cell (13.946), Curr Biol (10.025), Development (6.898)など発生,分化を扱う雑誌も横ばい。Nat Cell Biol (19.407) やJ Cell Biol (9.921)、J Cell Sci (6.29), Mol Biol Cell (5.861)などの細胞生物学も横ばいが続く。がん関係は圧倒的にぶっちぎりのIFを誇るCancer Cell (26.925)を筆頭にJ Clin Oncology (18.97), J Natl Cancer (14.697), Cancer Res (8.234)など引き続き関心の高い分野となっている。

Review 誌としてはAnn Rev Immunol (49.271), Nat Rev Mol Cell Biol (38.65), Nat Rev Cancer (37.178), Nat Rev Immunol (35.196), Nat Rev Genet (32.745), Ann Rev Biochem (29.742), Nat Rev Neurosci (29.51) とAnn Rev誌とNat Rev誌の独占状態。以前人気のあったCurr Opin Cell Biol(13.54)やTrend Cell Biol(12.14)はあえなく沈没。これらRev誌からうかがえるのは免疫、細胞生物、がん、遺伝子、生化学や神経科学が一般的に関心の高い分野となっていることが分かる。

本邦の英文誌を比較してみるとCancer SciとCell Struc Functが3以上になり一方Gene Cells が3以下にJ Biochemは相変わらず2すれすれを行っている。5年間の変化はCancer Sciが3.869から3.846と横ばい。Cell Struc Functが2.143から3,263へと上昇、Gene Cellsが3.517から2.889と低下、J Biochemは1.963から2.145と殆ど変動無し。

IFの変動から世界の研究動向をうかがうと、おおよその将来が予測できる。新しい分野としてはイメージングや新たな測定技術などの開発(NatBiotechやNat Method)とかChem Biol (Nat Chem Biol)などの化学の生物応用領域やSystem Biol(9.532)などが台頭して来ている。一方、一般的な分子生物学や生化学をあつかう雑誌は長期低落傾向か?ただ生化学でも代謝を扱う領域はリバイバルしている。IFの高さは研究の流行に左右され易い。流行のみを追い求めるのはいかがと思うが、流行している分野はどんどんと領域が広がり、新設講座も増え、採用ポジションや投入されるお金も増えるので、あながち無視も出来ない。判断に難しいところである。
スポンサーサイト


最近の記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。