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パラサイトは手品師

2011年08月01日 19:10

パラサイトの宿主細胞侵入におけるトリック

アマチュアのマジシャンが好んでやるトリックに針を風船を割らないで中を通すというのがある。これとそっくりなことをマラリアなどの原虫が宿主細胞に侵入時にやっている。パラサイトが宿主細胞を傷つけずに侵入するトリックについての論文がでた。少し専門的で難しいのがかいつまんで解説する。

マラリアやトキソプラズマなどのアピコンプレクス寄生原虫は巧妙なトリックを仕掛け細胞内に侵入する。それらは宿主の細胞に入り込み空包で完全に自分自身をシールして細胞構造を壊す事も無い。このプロセスでの中心は強い、動くジャンクションとして知られる構造 (Moving Junction, MJ)の形成で、宿主と寄生体の膜の間にタイトな分子シールを作り出す事である。この論文ではMJのコアーとなる複合体の構造が解かれ、どのようにして接合部を作り出す蛋白質が相互作用するのかという機序が解明された。
 動く接合部は最初血中のマラリアが赤血球に侵入する電顕像の電子密度の高い領域として定義されていた。ここ5年、研究者はアピコンプレクスに共通の接合部を構成する中心的な分子の同定に力を注いで来た。宿主と寄生体の膜を貫くコアー成分は寄生体由来であった。つまり侵入する病原体はリガンドと受容体の両方を作り出し、侵入を容易にする。受容体はアピカル側から分泌されるrhoptriesと呼ばれる小器官である。最近の研究ではrhoptryのneck蛋白質(RON)であるRON2が宿主に注入され受容体として働き, 寄生体側のアピカル膜抗原1(AMA1)と接点を形成していることが分かって来た。一旦接点が構築されるとAMA1-RON複合体はリング状構造を形成し完全に寄生体と宿主の間をシールする。宿主細胞への侵入が完了すると、actomyosinモター駆動によって後方へと移動させられる。

TonkinらはToxoplasma gondiiのRON2細胞外ドメインの遺伝子の欠失、変異体を詳細に解析し、不可欠なAMA1結合ドメイン部位を決め、AMA1-RON2相互作用の構造を解いた。そして、RON2のAMA1結合部位をS-S bridgeの一対のシステイン残基を含むUの形のポリペプチドループと決定した。このシステイン突起は登山用のカムのように働き、AMA1蛋白質の疎水性グローブ内に深く突き刺さる。この埋め込まれた構造は侵入力点としての接合の基礎となる。AMA1-RON2の相互作用の構造解明はマラリアが赤血球へ侵入するのをブロックするいくつかの戦略の分子基盤を与えた。実際、RfAMA1のモノクローナル抗体は有意に侵入を抑制する。
 そしてTonkinらは接合部自身の詳細な性質やいかにしてそれが生じて来たのかの質問にも答えている。まず、RON2は如何にして宿主細胞の細胞骨格内にアンカーしているのか?アピコンプレックスの標的細胞の多様さ(赤血球、肝細胞)を考えるに牽引力を発生するのにはある種のかっちりとしたプラットホーム(細胞骨格)の必要性を示している。マラリアやT. gondiiの侵入中に宿主細胞のアクチンの再構成が起こるという最近の証拠は宿主の辺縁部の細胞骨格とRON蛋白質の間のある関連を意味している。
第2にRON複合体は如何にして移動するのか?これには膜の融合と蛋白質の移動が必要かもしれない、がその詳細は分かっていない。
まだまだ自然界には不可解な多くの現象がある。パラサイトが細胞膜を傷つけずに、内部へ侵入していくのかは長い間不明であったが、パラサイトと細胞の接触面に接合部ができ、間をシールしそれが動いてパラサイトが細胞内に侵入する。つまり寄生体と宿主細胞の接点にゴムのようなパッキンングができ、それによって外界からシールされ、細胞を壊さずに細胞内に潜り込める。
Revealing a Parasites Invasive Trick
Jake Baum, Alan F. Cowman
Science 333, 410-411 (2011)

本文「Host Cell Invasion by Apicomplexan Parasites: Insights from the Co-Structureof AMA1 with a RON2 Peptide. Tonkin ML et al. Science 333, 63-67 (2011)」


図 細胞への侵入
動く接合部(Moving Junction)として知られる構造を作る事によってT.gondiiやP. falciparumが線維芽細胞や赤血球に侵入できるようにしている。各々の寄生体細胞のアピカル端が接合部を形成して、寄生体の表面にAMA1を出し、宿主膜には注入されたRON複合体を含む接合部を作る。
MJ複合体の集合は寄生体のrhoptry neck protein(RONs)を宿主細胞に注入する事で始まる。そこでRON2は膜をまたぎ、寄生体のapical membrane antigen1(AMA1)の受容体として働く。
RONI2は疎水性のグローブに挿入されたループによってAMA1のDIIループと強い結合を形成して、宿主と寄生体の膜を結合させる。Science 333, 410-411 (2011)より。
マラリア
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