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毒キノコの毒成分

2011年09月06日 19:15

毒キノコ

滋賀県でカエンタケという毒キノコが異常繁殖しているので注意を呼びかける記事が新聞に載っていた。
カエンタケ(写真)というキノコは聞いた事がなかったので調べてみた。
「梅雨期から秋にかけてブナなどの広葉樹林に群生または単生する。通常、地中に埋もれた倒木や枯れた木の根などにつながっている。子実体は鮮かな赤色を呈し、手の平状・炎状・棒状となり、内部の組織は白色である。真っ赤な色と炎のような形から、この和名が与えられた」。とWikipediaにある。毒性は強く3g摂取すると致死にいたる。腹痛、嘔吐、水様性下痢を呈する。その後、めまい、手足のしびれ、呼吸困難、言語障害、白血球と血小板の減少・造血機能障害、全身の皮膚のびらん、肝不全、腎不全、呼吸器不全といった多彩な症状が現れ、致死率も高い。回復しても、小脳の萎縮、脱皮、脱毛、言語障害、運動障害などの後遺症が残ることがある。毒性分はマイコトキシンとして知られているトリコテセン類(ロリジンE、ベルカリンJ、サトラトキシンH)である。これらの毒は皮膚刺激性が強い。
マイコトキシンと言えば古くなった米やピーナツに生えるカビの生成するアフラトキシンが有名である。天然の物質として最も発がん性の強いもので食品には0.01ppm以下の基準が設けられている。以前古米から検出されて大騒ぎになった事がある。

1999年の10月にカエンタケを食べた男性が死亡した事件が発生した。新潟県の見附市の旅館に宿泊した男性客5人はロビーに飾ってあったカエンタケを酒に浸して食べ、中毒症状を起こした。そのうちの一人が死亡したという。カエンタケは旅館の人が珍しいので近くの山で採って来たもので、警察は何故ロビーに飾られたかやなぜ食べたのかその動機を事情聴取した。カエンタケのようにいかにも毒を持っていそうなけばけばしい色、形をしているキノコを何故食べたのか?誰かが知ったかぶりしたのか、毒キノコだと分かって肝試しに誘ったのか、テレビのサスペンスシリーズになりそうな事件である。

毒キノコを食べて中毒になる人が後を絶たないが、何故見知らぬキノコを口にするのであろうか?キノコと言えば松茸や椎茸などのようにみんな食べられると錯覚している人が多いのか?ただ食べられるキノコと間違えたのか?食べた代償は余りに大きい。

天然物、天然の野菜や植物はたまた漢方薬などは害がないと信じきっている主婦が多い。植物とて一方的に動物に食べられる訳にはいかない。毒を持ったり、とげをつけたり,苦くしたりして動物に食べられるのを防いでいる。長い人間の歴史の知恵で食べられるものと食べられないものを分別、改良して野菜として食糧にしてきた。だから日常食べている野菜は安全な訳で、見知らぬ植物やキノコは食べないほうがいい。

しかし毒キノコは人に危害を加えただけでなく、 毒物の研究を通して科学の発展に重要な役割を果たしたものも事実である。

テングタケ類のキノコは環状ペプチドのアマニチンやファロイジンなどの毒を持ち、下痢、腹痛、嘔吐をおこし、肝臓、腎臓に細胞障害を与えて致死に至る。アマニチンは真核生物のRNAポリメラーゼIIを阻害しmRNA合成を抑制してタンパク合成を抑制する。よって蛋白質合成阻害剤として使用されるが個体には強い細胞毒を示す。ファロイジンはアクチン線維に結合するため、細胞生物学でアクチン細胞骨格を染める試薬として日常茶飯事に使われている。

ヒトヨタケはコプリンを含み、アセタケ類はムスカリンを含む。コプリンの代謝産物の1-アミノプロパノールはアルコールを代謝する、アセトアルデヒド脱水素酵素を強く阻害し、血中にアセトアルデヒドが蓄積する。よってアルコールの摂取は症状をひどくする。
一方、ムスカリンはアセチルコリン受容体に働く。薬理の授業で真っ先に習うように、アセチルコリン受容体にはムスカリン受容体とニコチン受容体がある。ムスカリンはムスカリン受容体のアゴニスト(作用薬)として働く。ムスカリン受容体は末梢では副交感神経の神経末に存在する。そのため唾液がでて発汗を催し、嘔吐、下痢に至り、更には瞳孔の縮小、不整脈、血圧低下に至る。中毒症状を示した場合、ムスカリン受容体のアンタゴニスト(拮抗薬)であるアトロピンを投与してムスカリン作用を抑制する。

テングタケ類はイボテン酸を含む。重要な神経伝達物質であるグルタミン酸と類似の構造を持ちグルタミン酸のアゴニストとしてグルタミン受容体に働き興奮作用を有する。日本の薬学者竹本常松によって1960年にイボテングタケより発見されたためイボテン酸と命名されている。英文名もIbotenic acidである。

ゴクササコは竹やぶにはえる日本特産のキノコでアクロメリン酸A,Bを含む。両者ともグルタミン酸アゴニストとして強い活性を示す。手足の先が赤く腫れる末端紅痛症で激痛は1ヶ月以上続く。

殆どのキノコの毒は中枢神経の研究や生化学、細胞生物学の研究の試薬として重要な役割を果たして来た。強い作用を持つものは当然中枢神経系や代謝などに特異的な強い作用を有する。そのため生体の未知の機能を明らかにするのにこれらの毒物は役立って来た。毒研究は最先端の研究へのヒントとなるものを与えてくれる事が多く興味深い。
しかしいずれのキノコ毒も激烈な作用を有し、悪ければ死亡に至り、軽くても激痛に苛まれることが多く、知らないキノコは絶対に口にしない事である。

カエンタケの写真
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