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世界の生物、医学研究予算事情

2012年02月13日 18:03

研究予算の動向
(参考:Funding in 2012 Great recession starts to bite. Cell 148, 14-16 (2012) )

世界的な不景気のため、先進国での生物、医学予算は軒並みカット。一方、発展途上国では、大判振る舞いの国が多く、くっきりと明暗が分かれている。

 昨年の生物、医学研究に費やされたお金は、世界的な経済の状況を考えれば、良く維持された方であろう。しかし、Cellが調べた15カ国の研究費の動向調査によれば、2012年の年明早々に、ひどい経済不況のインパクトが研究室にまで押し寄せてきた。
「各国を見渡して生物、医学研究へ割かれたお金を一律に比較するのは難しい」 国により異なった科学の発達段階にあるので一概に年間予算を比較できない、しかもOECDのデータは通常2-3年も古い。人件費は先進国では公共的観点から凍結されているので、コストの大半を人件費が占めているにもかかわらず、インフレを考慮に入れられない。よって、機関は活動レベル維持のためインフレにリンクした賃上げもできない。
公表されているドキュメントを調べたり、研究者にインタビューしたりして生物、医学研究へのグローバルファンドが2012年の始めにいかに進行しているのか調べた。

米国の予算事情

リーマン ブラザースが2008年10月に破産して、冷たい風が吹き始め、西洋諸国を覆う経済は減速へと向った。2012年の今日、経済の減速は研究室にまで及び、その影響は世界の国のすべてを足した額より大きいアメリカの生物、医学研究の予算を使う生命科学研究者にもひしひしと実感させられている。

NIHの予算は$30 billionでここ3年間変化無しに保たれている。しかしObama大統領は2009年2月に経済活動を活発にするため$10 billionの追加予算にサインをした。
しかし、2010年から2011年にピークを迎えた研究予算はその後急激に減少していった。生物、医学予算のロビー活動を続けるFASEB(Federation of American Scientists for Experimental Biology)の政策担当の長であるHoward Garrisonは2011年から2013年の間、科学振興の追加予算を$3 billionから数百millionでやるようにと言われている。同時に、国全体の支出へ対する強力なプレッシャーでNIHの中核予算も事実上凍結されている。
12月15日に議会は2012年のNIHの予算を$30.7 billionとし、2011年度予算より1%程度増加させた。これは明らかに1.5%減少した他の連邦予算よりはましだ。しかし、$1.5 billionより少ない研究振興予算額やインフレでその効果も減少し、生物、医学研究は事実上2012年には5%以上のカットに直面している。

2013年はもっと悪くなるであろう。昨年の10月に議会は連邦予算に関して痛々しいとも言えるネゴシエーションを行なったが、結局委員会はアメリカ政府の支出カットの額を決められなかった。これにより、議会は自動的に2013年の全ての政府のプログラムの削減をするという削減計画を始めた。そして、NIHも8-10%の削減を受けた。

この削減案を撤回させるのは難しい。民主党がその変更を認める事はまず無いだろう、そしてNIHはその案を飲むしか無いと考えている。全てを一律にカットすることは無謀としか言えない。しかし削減案を変更するという政治的落としどころはある。とFASEBの司法責任者のJennifer Zeitzerは言う。
責任政党が民主党であれ共和党であれ国家の負債解消に取り組まなければならない。だれもscienceが例外だとは思っていない。そこで、科学予算のカットの度合いを軽減すべきだ。とNorth CaroliaのDuke Universityで植物学者で大学の副学長のJim Siedowは言う。予算の分配を決める前に、研究室への分配やサービスに使う57%のoverheadをうまく操作すべきだ。

アメリカで起こっている一般的財政状況は世界各国にも伝播する。生物、医学研究は賢明なる投資として、一般大衆や保守的な会計担当者にも人気がある。しかし、それへの支出を維持または増加させようとする運動もあったが、生物、医学研究への支出を維持しようとする議論は予算カットという一般的圧力に屈してしまった。

カナダでは研究者は昨年の予算で、脳研究に$100 millionが追加された事に喜んでいる。しかし2012年はいいnewsはない。3月には厳しい予算が導入される。財務大臣のJim FlahertyはCanadian Institute of Health Research and Health Canada を含む全ての機関に、少なくとも5%のカットを要請した。Scienceは重要だが、絶対ではないとCanadian Science programのアドバイザーのPaul Dufourは言う。

ヨーロッパ予算事情

ヨーロッパを覆う澱み

英国において、UK Medical Res Council (MRC) は他の機関よりはましだ。我々は悪い立場には無い。とその長のJohn Savillは言う。英国での全ての領域の予算は2011年から2013年にかけて凍結されているけれども、MRCは微増の予算を配分された。12月5日に首相のDavid Cameronはscienceに対してのスピーチを行ない、生命科学へ力は入れては行くが、お金はないと述べた。しかしSavillは失望していない。政府は我々の言う事を聞いてくれるだろうと。楽観視している。

ヨーロッパ大陸では事態は少し込み入っている。他の主要な科学国は予算を節約しているが、ドイツは強気で強力に研究を押し進めようとしている。2012年のBMBF, German Research and Education Ministry, のHealth Res予算はE1.27 billionからE1.38 billion ($1.8 billion)へと9%増加する。
FranceではINSERM予算は0.4 %の微増。しかしその他の予算は全て退職したスタッフの年金へと使われるので、実際は減少する。研究者は次第にサポートを得られなくなり、苦境に落ちるであろう。

BRIC諸国

インドの場合、事態は全く異なる。新たな5カ年計画では2月に発表され4月から効力をもつ、はかなり大型の予算を2つの主要な医療研究 機関に導入した。Department of Biotechnology (DBT)とIndian Council of Medical Res (ICMR)だ。政府は私的機関の創薬研究を爆発的に加速させるための投資を行なう。そのため、両機関は2011年の$280 millionと$120 millionから各々40%のアップがある。あるオブザーバーは実際は20%の増加に留まるであろうと考えているが。

中国は同様にダイナミックな予算を組んでいる。しかし、その予算額は不透明で、OECDや他の国際機関がそのR&D予算を減らしているにもかかわらず、中国での医療研究に費やしたお金は2008年の3 billion genから2011年には倍の6 billion($1 billion)と成っている。この上昇は今年も続き、結局は20 %増となるであろうと予測している。
では韓国ではどうであろうか?韓国はここ10年驚くべき増加率であったが、ここ2年はその伸びは鈍化している。2012年はまだ決まってないが、しかしそこそこの伸びはあるであろう。

日本
では日本はどうであろうか?2011年は医療研究の予算はY340 billion 円($4.4 billion)であったが、停滞はここ数年続いている。しかし2012年は震災からの回復のため、10%程度の増加を行なうのではないかと考えられている。

全ての西洋諸国において、様々な努力が見られるが主要な生物、医学研究への予算はかなり鈍化している。特に北アメリカでの期待は惨めなものとなった。ヨーロッパでも同じく悲惨であった。しかしドイツという経済的状況の良い先進国や中国、インド、韓国など発展途上国は積極的に研究へお金を投資している。
なんと言っても世界中の全ての予算の額の大半を占める程、米国の予算が大きいため、米国での研究予算の減少は各国へ非常に大きな影響を与える。日本の研究開発へかける予算はその経済力の大きさを考え、研究へのお金の投入を積極的に行ないたいという政府の発言にもかかわらず、余りにも少ない。また震災復興などへ優先的に廻されるため、極めて厳しいものになるであろう。
また2012年-2013年度にかけて、GCOEが軒並み終わるが、それで雇用されているポスドクやスタッフの雇用先が確保されていない。大量の研究者浪人を出しかねない事態は非常に深刻である。大学も間接経費が減ってしまったため、彼らを雇う余分のお金もないことが、その悲惨さに追い打ちをかけるであろう。

文科省は、博士課程の学生数を大幅に増やし、その結果、多くのPhDが産み出されて来たが、その学生達の就職先のことまで考えない付け焼きの政策を実施して来たため、大量の博士浪人が作り出され、大きな社会問題となっていた。しかし文科省はここ10年、COEやGCOEという若手研究者育成のプロジェクトを走らし、雇用のチャンスを創設する事で、オーバードクター問題を緩和しようとして来た。しかし、これらのプロジェクトで非常勤雇用の職にいる研究者の正規雇用への登用のチャンスは少なく、キャリアーパス形成上、大問題であった。その上、GCOEの消滅でポスドクへのチャンスさえ一気に無くなってしまうと、彼らを収容するパイはどこにもなくなる。若い研究者の正規雇用のチャンスも少なく、非常勤雇用の可能性までも摘んでしまったら、日本のScienceは崩壊してしまう事は目に見えている。そのような問題が目に見えているにもかかわらず、目をつぶって来た文科省の罪は大きい。また大切な基礎的な生物、医学研究には予算の増額を認めず、若手研究者のキャリアーアップのための人件費も認めないで、意味の無い目新しさばかりを売りにしたプロジェクトでないと、予算を付けたがらない財務省も日本の研究をダメにしている。また、省庁の縦割り行政の弊害が研究面にも深く悪影響を及ぼしている。省庁を越えて、研究を一元的にサポートする省を作り、長期的展望に立って、研究者をバックアップする体制を一日も早く構築しないと日本のサイエンスは没落するか、中国や韓国にも追い抜かれる事態になるであろうことを危惧する。

生命科学研究予算(OECDの最近のHealth Government Budget for Appropriations or Outlays on Research and Development (GBAORD))と伸び率。
日本の予算があまりにも低すぎるように思えるが(上の文中では4.4b)、これは多分基礎研究予算で、臨床医学研究などは含まれずまた、全ての生命科学予算ではないのであろう。それにしても少ない。日本も経済が立ち直らなければ、ポスドクを中国でやらなければいけない時代になるかもしれない。遣唐使以来の出来事。

アメリカ $43.6b + 2%  土砂降り
英国   $ 2.6b +2%   曇り
日本   $ 1.5b + 10 %  ずーと曇り
韓国   $1.3b +10%  曇り時々晴れ
ドイツ  $ 1.3b +9%   曇り時々晴れ
カナダ  $1.3b -5%   雨
フランス $1.2b -1%   曇り
スペイン $1.2b ?     雨
イタリア $1.1b ?    雨
中国    ?   +20%  ずーと晴
インド   ? +20 %  ずーと晴
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