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零戦の遺伝子

2012年08月28日 18:53

国産ステルス戦闘機「心神」
戦後国産ジェット戦闘機の製造は長い間、封印され、米国からの型落ち戦闘機を高い価格で押し付けられ続け、国産戦闘機を自主開発したいとする試みは米国によっていつも潰されて来た。
かって零戦という名機を作った遺伝子は日本から絶滅してしまったかと思われたが、名古屋の三菱重工を中心に脈々と受け継がれ、全く新しい概念によるステルス性国産戦闘機「心神」の開発に生かされようとしているーー春原剛 著「零の遺伝子」。

F35 Lightning
今年に入り、自衛隊の次期主力戦闘機(Fighter Experimental, FX)にF35Aライトニング(米ロッキードマーチン社が中心になり開発中の単発単座機、写真1)が選定された。一機あたりの機体価格は102億円で、28年度末までにまず4機分を正式契約した。最終的には合計42機を購入する計画で,国防省による米議会への報告では総額は8000億円と、一機の値段が190億円に跳ね上がっている。
このF35A ライトニングは第五世代の戦闘機と言われ、ステルス性、高運動性に優れているが価格は異常に高い。また最終的に量産型が未だ出来上がっておらず、正式な価格がいくらになるかは決まっていない。
スペックは全長15.7 m, 全幅10.67m, 全高4.328mで重量は何も掲載していない時13,290kgである。エンジンはP&W F135 1基で推力18,140 kg, 航続距離2,222 km, 最高速度1.5-1.8 マッハであるがなんといってもステルス性にその特長がある。

F22 Raptor
当初は、米ロッキードマーチン社で開発され、すでに米軍で運用されているF22ラプター(写真2)を次期主力戦闘機に採用したかったが、米国議会の許可が下りずに、F35ライトニングとなった。
現在米軍が配備している第五世代ステルス戦闘機F22は戦闘機同士が戦うdog fightにおいてfirst look, first shot, first kill能力において圧倒的優位性を持ち、目視は出来てもレーダーに映らないという高いステルス性を有す。またアフターバナーを使わなくても超音速飛行が可能で、更に、短距離離着陸可能という世界最強の戦闘機で、5機のF15に対してF22はたった1機で圧勝し、運動性能の高いF16に対しても圧倒的優位で無敗神話を作り上げている。レーダースクリーンに虫ぐらいの大きさにしか映らないF22の前では自衛隊が誇るF15と早期警戒管制機のチームプレイもお手上げであった。
F22は全長18.90m, 全幅13.56m, 全高5.09、重量19,700 kgで航続距離2963.2 kmでエンジンはF119-PW-100を2基搭載で、推力15,876 kgで最高速度マッハ2を出す。

なぜこのように圧倒的なF22でなく、F35になったのか?
F22は余りにもハイテクで秘密にしたい最新情報が詰まっていることや、これを日本の自衛隊が持つことに、中国が反対のロビー活動したため、米国議会で海外輸出が禁止されてしまったとも言われる。ただF22は1機あたり400億円にまで跳ね上がりそうな価格で、米国でさえ、当初750機生産予定が米国議会の激しい抵抗で183機に抑制されてしまった。F22の開発費は約3兆円とされ、新たに開発を進めている次期戦闘機候補のF35の開発費は4兆円にも達する。

ステルス性
第五世代の戦闘機の特長はなんといってもステルス性能の高さである。一般にレーダーの特性は対象物に電波を飛ばし、そのぶつかって返ってくる電波を受けて、対象物の方向や距離を知るところにある。レーダーに察知されないステルス性能を上げるには、この跳ね返りの電波を如何に素直に返さないかにつきる。ドップラー効果を利用して対象物の位置を探知、確認するレーダーの裏をかくには反射する電波を少なくする、あるいは散乱させればいい。そのため、機体表面に多面性を持つ構造を作り電波を散乱させたり、特殊なコーテイングをして電波反射を少なくする。最大の電波反射源はエンジンだとされる。敵レーダーが発する電波をいかにエンジンまで届かせないかが最大の問題となる。F22ではエンジン用のエアーインテイクは極力小さくし、レーダー波がエアーダクト内侵入しにくくし、内部構造も2度のクランクを持つ凸状にして電波の通り道を2度に渡って遮断している。このような複雑な構造をつくるため、どうしても重量が増してしまい、エンジンは馬鹿でかいものを積む必要がある。F22は凸構造が縦置きになっており、F35は横置きになっている。

国産戦闘機(心神)の開発
第五世代の国産戦闘機を製造するに際し、そのステルス性能を考えた場合、どうしてもエンジンの大型化が避けられない。ステルス性能の向上には内部に凸凹の曲がり形状を持つ複雑なエアーダクト構造を採用する必要があり、F22などは双発のエンジン各々が15,000 kg以上の出力を持つのに、現時点で開発された実証機に搭載するXF5はたったの5,000 kgであり、この出力で複雑なエアーダクト構造を採用すれば,飛行中にエンスト状態に陥るおそれがある。実証機を経て日の丸ステルス戦闘機を開発するには、大型のエンジンの開発から始めなければならない。
計画ではジェットエンジンとしてXF5(IHI, XF5-1アフターバーナー, 推力5,000 kg)を2基搭載し、重量13t, 全長14,174 m, 全幅9,099 m, 全高4.514 mとF22やF35と比較してかなり小ぶりであるがマッハ2をだせる。この点も零戦の遺伝子を継承しているのかもしれない。

日本の国産戦闘機を語る際、エンジンの悲劇は常に影のようにつきまとっている。日本が誇る零戦は出力1,000馬力未満の栄エンジンという弱点を抱えていた事は有名だ。零戦は極限まで軽量化が行われ、運動性能がすぐれ、ドックファイトに強い玄人好みの戦闘機であったが、エンジン出力が弱く新たに装備を充実させる余裕が無かったのに対し、零戦に対抗するために作られたグラマン社製のヘルキャットは2,000馬力のエンジンが積まれ、不格好ではあるが余裕を持って装備がなされ、固い鋼鉄で守られた操縦席という安全で使い勝手の良い戦闘機であった。

かって次期支援戦闘機(FSX, Fighter supporter-X)開発の際に日本が泣く泣く「日米共同開発」を飲まされた背景に、国産のジェットエンジンが無く、「どうしても自主開発に固執するのならエンジンは供与しない」と言われた。このため、国産実証機「心神」の開発に携わっていたエンジニアの中には「本当に日の丸ステルス機を開発したいのなら本格的な国産エンジン開発にまで踏み込まなければならないという声が根強くあった。にもかかわらず日本ではF22並みに13トンから15トン前後の大型エンジンの開発には二の足をふみ続けてきた。その大きな理由に大型エンジンの開発には莫大な経費が必要で、費用対効果の面からも躊躇され、米軍から供与を受けた方がいいとする意見も多く、今まで開発されないで来た。実際3−4兆円にも及ぶ予算を一つの戦闘機開発にあてる余力は今の日本には無い。

しかしながら零戦を開発した遺伝子は脈々と三菱重工や防衛省の一部のエンジニアにより引き継がれ、安上がりしかし小型高性能機の開発を目指し防衛省は「次世代ハイパワー、スリムエンジン」という開発コンセプトを明らかにし、国産エンジンの開発に乗り出そうとしている。

そのエンジンの特長として①世界最高レベルの温度レベルの耐熱材料である鍛造デイスク材を使った高圧タービンデイスク②世界最高温度レベルの耐熱材料である単結晶材を使った高圧タービン翼③日本でのみ製造可能な素材を使った耐熱セラミック材を使ったエンジンノズルの三要素を列記している。これらを組み合わせる事で世界に類を見ない高性能エンジンを目指すとした。しかしこのエンジンを搭載した実証機(写真3)の実現は東北大震災による津波で松島基地に置かれていた18機のF2が水没したため、その修復が終了する5年後となってしまっている。

いずれにしても、零戦を開発した遺伝子「軽量かつ運動性能が抜群で、フォルムの美しい」を継承する国産戦闘機「心神」の開発が行なわれようとしている。裾野の広い航空産業における「心神」の開発は、産業界への波及効果が非常に大きく技術立国日本の復活に一役買うことであろう。


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