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エボラウイルス:感染と出血症状

2014年10月22日 16:58

エボラ出血熱

 エボラ出血熱が猛威を振るい、アフリカ以外でも流行しそうな気配がある。
エボラウイルスに感染すると治療しないと90%の致死率で治療をしてもその致死率は60%に上るという、最悪最強のウイルスだ。
しかしその名前が知られている割にはその感染や出血にいたる機序はあまり知られていない。そこでエボラウイルスについて調べてみた。特にエボラウイルスに感染するとなぜ出血するのかの機序について調べた。内容が少し専門的で難しくなってしまったがご容赦願いたい。

 エボラウイルスはフィロウイルス科に属するRNA ウイルスである。フィロウイルス科はマールブルグウイルス属およびエボラウイルス属からなる.エボラウイルス属は抗原的および系統学的に4 種(Zaire,Sudan,Ivory CoastおよびReston)に分けられている。

 1)エボラウイルスは、どのように人体に入り込むのか?
エボラ出血熱は空気感染しないことで知られている。何らかの方法でウイルスと接触しない限り感染のリスクはない。ウイルスに感染した動物 (大コウモリが元々の宿主) との接触や、ウイルスに感染し症状が出ている患者の体液への接触、ウイルスに汚染された器具接触により感染する。潜伏期間は通常7日程度(最短2日、最長3週間)。WHOおよびCDCの発表によると、潜伏期間中は感染力はなく発病後に感染力が発現する。発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを呈する。進行すると口腔、歯肉、結膜、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。
 2)エボラウイルスの特性
 ウイルス粒子の表面は脂質2 重膜で構成されるエンベロープに包まれ,その上に表面糖蛋白質(GP)が突起物のように存在する.単一で直線的なRNAは7つの遺伝子をcodeしている。 RNA-dependent RNA polymerase を始め、NP(nucleoprotein),VP35(polymerase cofactor),VP30(transcription activator)はウイルスRNA と複合体を形成しており,ウイルスゲノムの転写および複製に関与する.VP40(matrix protein) はマトリックス蛋白質としてウイルス粒子形成に関与する.VP24(secondary matrix protein) は第2 のマトリックス蛋白質と考えられている.この他に、エボラの感染や出血などの症状を引き起こすGP(glycoprotein、糖蛋白質)を持つ。GPはウイルスが細胞に感染するために必須であるが、このGPはGolgiでGP1とGP2に分断される。 GP1は宿主の細胞受容体に結合し、GP2はウイルスと細胞膜との融合を引き起こす。細胞内への侵入は受容体媒介、もしくはlipid raft依存性のendocytosis やmacropinocytosisで行なわれる。エボラウイルスのGPを細胞に発現すると、インテグリンなどの細胞接着タンパク質の細胞表面での発現が抑えられて、細胞は円形化し剥離し易くなる。

 3)感染すると、人体にどんなことが起こるか?
  細胞表面受容体GP1,2とVP40で構成されるウイルス様粒子は内皮細胞を活性化させ、ICAM-1やVCAM-1、E-selectinを発現させ、内皮細胞の透過性を高めるとともに、TNF-α、interleukinなどのサイトカインの発現をも高め、透過性を更に増強させる。
この過剰なサイトカインの放出がインフルエンザに似た症状を引き起こしている。それがエボラ出血熱の初期症状である。
 エボラの表層GPそのものにも細胞破壊作用が有り、膜透過性や細胞の剥離を促進する。更に、VP35やVP24はtype I interferon活性を阻害する。その結果重篤な病理症状を示し、血管透過性が亢進して皮膚や粘膜や内蔵から出血をきたす。更にこのウイルスは血液凝固系にも異常を引き起こし、血管からの出血を促進し、患者は出血性ショックから死に至る。これがエボラ出血熱と呼ばれる所以である。

 本ウイルスの特徴である糸状の形態はVP40 およびGP によって決定されており,これら2 つの蛋白質を細胞に発現させるだけで,本物のエボラウイルスと殆ど同じ形の粒子が形成される
また、エボラウイルスは体に備わる免疫反応を巧妙に回避し、好中球と呼ばれる細胞へのシグナルを阻害する。白血球の1つである好中球は免疫細胞が警告を発し攻撃する役割を持っている。実際エボラウイルスは免疫細胞に感染し、肝臓、腎臓、脾臓、脳を含む体の各部位へと広がっていく。インフルエンザに似た症状がこの病気の典型的な初期症状で、それ以降は嘔吐や下痢、低血圧といったより深刻な症状が見られる。激しい出血は病気の終末期におこり、エボラウイルス感染による死者は通常多臓器不全とショック症状により最終的に死亡する。 ショックは出血による。いったん体の各部位から出血が始まると、血管からも血液が漏れ出す。仮に”出血性の特徴が無くとも血液は漏出している。
 4)治療の可能性
現在考えられている有望な手だてはウイルスの複製を阻害する薬剤の開発とエボラウイルスに対するワクチンの開発である。
 細胞内に侵入したウイルスの自己複製を抑止する薬剤として、ウイルスの複製機序が似ている、インフルエンザウイルスの複製を阻害する富士フイルムのグループ会社、富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名ファビピラビル)」がエボラウイルスにも効くのではないかと考えられ、実際に治療に応用され始めている。この薬剤はウイルスの複製を行なうRNA polymeraseの阻害剤で、インフルエンザウイルスやエボラウイルス以外に構造的に類似したRNA polymeraseを持つRNA ウイルスにも効く可能性がある。富士フイルムの株を買っておけば良かったと思ったが、あっという間に急騰し、今や手が出せない。
 もう1つは、ワクチンを作って免疫システムがエボラウイルスに対する有効な反応を生み出すのを手助けする方法である。
いずれも開発に着手されたばかりで、有効なものを作り出すにはまだ時間がかかる。

5)予防
エボラウイルスの感染力は強力でわずかなウイルスが体内に入っただけで発症する。そのため患者を治療する医療従事者が完全な防護服を着ているにもかかわらず、2次感染する事態がアメリカやスペインで起っている。日本への侵入も時間の問題であろう。予防としては、エボラウイルスは殺菌剤に弱く、石けんでの手洗いやアルコール消毒や塩素系殺菌剤によって簡単に死滅する。よってインフルエンザの予防と同じくこまめな手洗いと消毒が効果的である。

参考文献
1)Pathogenesis of the viral hemorrhagic fever: Annu. Rev. Pathol. Mech. Dis. Paessler, S. and Walker DH. 8, 411-440 (2012)
2)エボラウイルス表面糖蛋白質の機能解析:ウイルス56巻1号 高田礼人、117-124 (2006) 
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