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大腸ガンの特効薬にビタミン C?

2015年11月17日 12:25

ポーリングの予言が当たっていた?

Vitamin Cといえば化学結合やたんぱく質の構造解明で1954年にノーベル化学賞をもらったLinus Paulingが思い出される。また核実験反対を唱え1962年のノーベル平和賞も受賞している。
ポーリングは後年、vitamin Cの研究を行い、様々な病気に効くというvitamin C万能説を唱え、風邪にも癌にも効くと報告していた。

しかし1970年終わりから1080年初頭にかけてMayo Clinicで錠剤投与(経口投与)による癌の大規模な臨床試験が行われた。その結果、効果が認められなかったことから、急速にvitamin C フィーバーは冷めていった。

しかしごく最近、vitamin Cの大量投与が大腸がんに効果があるとの動物実験での結果が出され、その理論的根拠も明らかにされた。
Jihye Yunは数年前にJohns Hopkins大学の大学院生であった時に、KRAS や BRAF (Ras familyのガン遺伝子)の変異で起こさせた大腸がんはGLUT1 というグルコースを輸送するたんぱく質の発現が亢進していることを発見した(Science 18, p1555, 2009)。GLUT1はグルコースだけではなくvitamin Cの酸化型であるdehydroascorbic acid (DHA)も細胞内へと輸送する。

そのYunが今度はLewis Cantley (PI 3-kinaseの発見者)研究室のポスドクとなり、vitamin CがKRASやBRAFの変異で癌化している大腸がんに効くという論文を出した。ちょっと医学、生物学に馴染みのない人には難しいかもしれないがその論文を紹介しよう。
Jihye Yun, Lewis C. Cantley, et.al.
「Vitamin C selectively kills KRAS and BRAF mutant colorectal cancer cells by targeting GAPDH」Science Reports 5 November 2015 on line
(解説:Vitamin C could target some common cancers, Science, 350, 619, 2015)

KRASやBRAFは人の大腸ガンで各々40 % 及び50%のが変異見られる最大のがん遺伝子である。BRAFはKRASの直接のターゲットとして下流のMAP kinaseを活性化し細胞増殖作用を起こすことがすでにわかっている。
KRASやBRAFの変異した大腸がんではグルコースを輸送するGLUT1が上昇しており、グルコースの取り込みが増加していた。Vitamin Cはsodium vitamin C cotranspoter (SVCTs)によって細胞内へと運ばれるが、酸化されたvitamin Cのdehydroascorbate (DAH)はGLUT1によって細胞内へと運ばれる。細胞内へ入ったDHAはglutathione (GSH), thioredoxin, NADPHを使ってvitamin Cへと還元される。
実際、KRASやBRAFの変異した大腸がん細胞でのvitamin Cの取り込みは明らかに上昇していて、vitamin Cによりがん細胞の増殖やcolony formationは著しく阻害された。その際、生理的なグルコース濃度(5-10 mM)の条件下で、10 mMのvitamin Cで十分な効果が得られたという。
しかしGLUT1を過剰発現させてもvitamin Cの取り込みは増すが、vitamin Cへのsensitivityは増さないことから、vitamin Cはoncogeneによって引き起こされる代謝変化に関わる酵素のどれかに効いているのであろうと推察された。
次に、実際にマウスで大腸がんへの効果を調べた。Vitamin CはKRASやBRAF変異で生じた大腸がんには著明な効果があったが、その他の原因で生じた大腸がんには効かなかった。
では「どうしてvitamin CがKRASやBRAF変異を持つがんに選択的に毒性を示すのか」という作用機序を明らかにするためメタボローム解析をした。
Vitamin Cで処置していない変異細胞では解糖系やペントース経路の代謝産物が増加したが、vitamin C投与でglyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)より上流の代謝産物が蓄積し、下流の産物が減っていた。このことはvitamin CでGAPDHが阻害されていることを示す。
  DHAの取り込みでGSHやNADPHが減少し、細胞内の活性酸素 (ROS)が上昇し、そのtargetのGAPDHの代謝変化を生じる。実際、vitamin C 投与でKRAS 及びBRAF変異がん細胞でGAPDH活性は50%抑制されていた。

  結論として、KRASやBRAF変異のあるがん細胞ではvitamin C-induced ROSの上昇が起こり、GAPDHを阻害して、エネルギークライシスを引き起こし、細胞を死滅させると考えられた。
しかし問題はvitamin Cは経口投与では血中濃度が10mMに達するのは困難で、注射による投与が必要になる。このことが初期に行われた臨床試験で全く効かなかった原因かもしれない。
今後、大腸がんやKRASやBRAFの変異が起こっている他のがんへの大量投与による臨床試験が行われる予定である。
「火のないところに煙は立たぬ」と言うが、vitamin C 説もあながち嘘ではなかったことになる。
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