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植物の逆襲

2008年10月14日 12:16

食虫植物
植物と言えば、動物に食べられてばかりいるとの先入観があるがいつも食べられているばかりではない。反対に小動物を捕食する植物(食虫植物)も現れた。昆虫などの小動物をとらえ、消化液などで分解し、栄養分 (おもにアミノ酸やアンモニウムイオン)を吸収して利用する植物を食虫植物 (insectivorous plants) または肉食植物 (carnivorous plants) という。モウセンゴケやハエトリソウ (モウセンゴケ科)、ウツボカズラ (ウツボカズラ科)、タヌキモ (タヌキモ科) などが有名であり、約600種ほどが知られている。多くは水中や酸性湿原など栄養塩に乏しい環境に生育しており、不足する無機栄養分を分解した小動物から補っている。
完全な食虫植物は、1) 獲物となる小動物を誘引、2) 捕獲、3) 消化、4) 吸収、という4ステップを示すが、このうち一つ以上のステップを省略する種もおり、食虫植物と非食虫植物の境界は必ずしも明瞭ではない。
食虫植物は、ふつう捕虫葉 (insectivorous leaf) とよばれる特殊化した葉で小動物をとらえる。捕虫葉の形態は様々であり、ウツボカズラやタヌキモのように嚢状になった捕虫葉は特に捕虫嚢 (insectivorous sac) とよばれる。捕虫葉の形態は餌の捕獲様式に密接に関係しており、食虫植物の捕獲様式以下のように大別される。

1)落とし穴型 (pitfall traps)
葉柄や葉身が落とし穴型の罠になり、そこに落ち込んだ小動物を分解して吸収する。ウツボカズラ (ウツボカズラ科) やサラセニア (サラセニア科)、フクロユキノシタ (フクロユキノシタ科)、Brocchinia spp. (パイナップル科) などが知られる。Brocchinia reducta などでは特殊な捕虫葉は形成されず、重なり合った葉の葉腋部分に水が溜まって虫が落ち込む。そのほか多くの種では葉が袋状の捕虫嚢になるが、このような捕虫嚢は特に壺状葉 (嚢状葉 pitcher) とよばれ(図1)、壺状葉をもつ食虫植物は壺型食虫植物 (pitcher plant) とよばれる。捕虫嚢がアントシアニンなどで着色されて目立ちやすくなっていたり、蜜を分泌することで虫を誘引する。また Sarracenia flava (サラセニア科) はコニイン (coniine) とよばれる麻痺性のアルカロイドを生成することが知られている。捕虫嚢に入り込んだ虫が逃げられないように、ふつう捕虫嚢の内壁にはロウ質の鱗片や逆向きの刺がある。餌の選択性は無いので、大形の捕虫嚢をもつ種 (Nepenthes merrilliana など) では、捕虫嚢の中に小形無脊椎動物 (カエル、鳥、ネズミなど) が見つかることもある。落とし穴型食虫植物の多くは消化酵素を分泌せず、落ちた小動物の分解は細菌などにまかせている。ウツボカズラでも自身で消化するのは初期だけである。またこのような捕虫嚢の中は特異な環境であり、そこに好んで生活する昆虫や甲殻類、クモも存在する。クモなどはちゃっかりと食虫植物がトラップした昆虫を横取りしようとの魂胆だ。

2)粘着型 (とりもち式) (flypaper traps)
葉の表面に密生する腺毛が粘液 (mucilage) を出して虫を捕らえ、さらに多くのものでは消化液を分泌して分解する(図2)。モウセンゴケ属 (モウセンゴケ科) やムシトリスミレ属 (タヌキモ科)、Drosophyllum (ドロソフィルム科) などが知られる。粘液を出す腺毛と消化液を出す腺毛が同一の場合と分業している場合がある。モウセンゴケのように腺毛が動いて (傾性運動)餌を押さえつけ、さらに葉が巻いて餌を包み込んだりする種もある。

3)閉じこめ型 (わな式、挟み込み式) (snap traps)
ハエトリソウ属とムジナモ属 (モウセンゴケ科) が知られ、両者は共通祖先に由来する姉妹群である。葉身が中肋に沿って二つ折りになっており、小動物が葉面の感覚毛 (ハエトリソウでは6本、ムジナモでは約40本) に触れると活動電位が発生し (Caイオンの流出、50~130mV、10cm/s)、膨圧の急変 (向軸側の膨圧低下)が起こり、葉が迅速に閉合して餌を閉じこめる(図3)。中肋付近には特に膨圧変化が著しい細胞があり、モーター細胞 (motor cell)とよばれる。 この運動は陸上植物の能動的な運動としては最速であり、ハエトリソウで0.2~1秒、ムジナモでは約0.02秒ほどで縁辺の90%程度が閉じる。その後ゆっくりと狭窄運動が起きて餌が押しつぶされ、葉面の消化腺から消化液を分泌し分解、吸収する。餌が完全に分解されると (数週間かかることもある)、数日をかけて成長運動によって葉は再び開くが、次第に反応が遅くなり、葉は数回しか開閉運動ができない。

4)吸い込み型 (bladder traps)
タヌキモ属 (タヌキモ科) が知られる。このタイプの捕虫嚢は bladders または vesicula とよばれる。葉の羽片中軸に沿って小さな捕虫嚢が多数ついている(図4)。捕虫嚢は楕円形で2層の細胞層からなり、先端に蓋と長い突起がある。蓋は微妙なバランスで捕虫嚢を密封しており、捕虫嚢内部は陰圧に保たれている。捕虫嚢は水中にあるか、蓋の前に水滴がある。小動物 (線虫やミジンコなど) が突起を押し下げると、蓋に隙間が空いて獲物とともに水が急激に流入し、内外の圧が等しくなると再び蓋が閉じる。この開閉にはわずか 0.03秒しかかからない。この運動では活動電位は発生せず、全く機械的なものである。捕虫嚢は獲物と水を含んで膨らむが、呼吸によって得られたエネルギーを用いて、捕虫嚢内壁にある吸収毛からイオンが排出される。その結果、数十分~数時間で捕虫嚢内はもとの陰圧に戻る。内部の餌は捕虫嚢内壁の四叉毛から分泌される微量の消化酵素によって分解され、アミノ酸などが四叉毛から吸収される。

5)誘い込み型 (lobster-pot traps, eeltrap, forked trap)
Genlisea属 (タヌキモ科) が知られる。通常の葉に加えて、向地性を示すY字型の細い管状の葉がつく。2分岐している腕部はらせん状にねじれており、らせんに沿って狭い隙間がある。両腕が合流する分岐点にも開口部がある。管の中には逆向きの刺があるため、誘い込まれた獲物は奥へにしか進めない。葉の基部付近には膨潤した捕虫嚢 (utricle, stomach) があり、ここで獲物は消化・吸収される。

植物も動物に食べられるだけ、手をこまねいている訳ではない。食虫植物はありとあらゆる手段を嵩じて、昆虫を騙し、いかに補食するかを考えている。考えているかのようである。落とし穴方式、採りモチ方式、トラップ方式、吸い込み方式。実際に人間が動物を捕らえる時に使う罠そのものである。このような植物がどうのように進化してきたかを考えるだけでも不思議で、自然の神秘はつきない。自然は偉大なり。

図1、ウツボカズラ属;図2、モウセンゴケ属;図3、ハエトリソウ;図4、タヌキモ (食虫植物のお部屋より引用)

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