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老化を抑制する?

2014年11月04日 16:35

薬による老化の制御は可能か?
   
 薬によって寿命を伸ばしたり, 老化にともなって起る病気を遅らせるという夢のような事ができるのか? 答えはどうもYesらしいとの記事がScienceのEditor’s Choiceに載った 。その元となる論文はAging Cell (下記)の論文で、現在の老化研究の現況の総説 Cell (下記) と合わせて、老化がコントロールできるかどうかを考えてみた。

 Calorie restriction (CR、カロリー制限)が老化を遅らせ、寿命を伸ばす事はすでに認められている。それは主に代謝を遅らせ、活性酸素による細胞への傷害を弱める事で起っていると考えられてきた。しかし、現在ではCRの効果はNAD依存性脱アセチル化酵素、sirtuin (SIRT)の活性化を介して生じていると考えられている。実際、CRやSIRTは活性酸素の生成, 酸化damageを受けたタンパク質の生成、DNA damage, 幹細胞欠損、テロメア短縮、炎症、ミトコンドリア機能不全、タンパク質糖化、細胞老化など老化に伴う現象を抑制する。

 脱アセチル化酵素SIRTは寿命遺伝子と呼ばれ、様々な転写および代謝経路をmodulate する。マウスでの組織特異的なSIRT1の欠損は前炎症状態と代謝異常を起こす。反対に、全身でのSIRT1の過剰発現は、高脂肪食による代謝障害を改善した。SIRT によって脱アセチル化されるタンパク質にはミトコンドリアの代謝やストレスへの耐性を促進するものが多く、そのactivatorは魅力的なanti-aging 化合物と考えられている。

 SIRTはNAD依存性の脱アセチル酵素であるので、NAD+を増やしてやればSIRTの活性化を起こす事が期待される。NAD+の合成酵素であるnicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT) は時計遺伝子で活性化され、その活性は老化によって減少するので、NAD+は老化に伴って減少する事になる。しかしNAD+の減少は食事にNAD+の前駆体であるnicotinamide mononucleotide (NMN) や nicotinamide riboside (NR)を付加してやると戻す事ができる。少なくともネズミではそれらの投与によるSIRTの再活性化を起こして、ミトコンドリアのタンパク質の発現を高める事ができるという。

 一方で、SIRTを活性化させる低分子化合物の探索が行なわれ、前にもブログで取り上げたが、赤ぶどう酒が含むポリフェのールresveratrol (RSV)が見つかった。RSVはマウスの全身状態を改善し、高脂肪食を与えたマウスの寿命を改善した。また人でも肥満に良い影響を与えた。しかし活性が弱く選択性も低くanti-aging 薬としては実用性が低かった。

  そこで、より活性が強くSIRT1への選択性を改良した合成SIRT1 activator、 SIRT2104が開発された。この薬剤はインスリン感受性を改良し、健康な成人や年寄に投与しても安全であった。更に、人の血中脂質状態をも改良した。しかしこれらの投与は短期間でであったので、今回長期投与での効果が調べられた。

 SIRT1活性への影響を調べるため、MerckenらはマウスにSRT2104を6ヶ月令のマウスから投与を開始し、3年間マウスが生存している間投与した。するとそのマウスは最高寿命が5%、平均寿命が10%伸びた。そしてそのマウスは老化に伴って生じる多くの病気や問題に対し抵抗性を示した。マウスの血糖値は安定し、筋肉の耐久力が増し、脂肪も少なく、炎症的な反応をも抑制したという。短期的な投与でも実験的atrophyモデルで骨量や筋肉量を保持できた。最も著明な変化がmitochondria content の増加と炎症反応の抑制であった。

 次に、SIRT1が全身の代謝やマウスの生存を改良する機序を調べるため、肝臓と筋肉のwhole-genome microarray を行なった。最も著明な変化としてcytokine-induced Stat inhibitor familyに属するtranscriptがupregulateしていて、炎症反応を抑制していた。更にはアルブミンD-box 結合タンパク質(DBP)
のupregulationも見られた。DBPは時計遺伝子でその周期的発現がSIRT1でコントロールされていた。
 SIRT1に反応してmodifyされる経路の大部分はdownregulationされ、炎症やミトコンドリアの代謝に関係する遺伝子であった。Calorie restriction (CR)での影響と比較してみると、SRT2104で変化した上位20の遺伝子の発現の70%が肝臓で一致していた、しかし筋肉では40%以下の一致しか見られなかった。
 SIRTの作用として炎症抑制が重要な活性となっており、NF-kB/Relタンパク質 がその標的である事が分かった。NF-kB/Relは炎症、ストレス反応、自然免疫などを幅広く制御している遺伝子を調節する転写因子である。NF-kBの活性化はリン酸化やアセチル化で行なわれ、Sirt1仲介のRelA/p65の脱アセチル化はNF-kBの転写活性を阻害する。よってSRT2104の投与はRelA/p65のアセチル化の減少を介してRelA/p65の活性を減少した。予想されるように、他の炎症因子、TNF-αやMCP-1も有意に減少していた。

 これらの結果から筆者は老化や老化に伴って起る多くの病気を遅らせる低分子化合物のデザインが可能であり、人においてもSIRT1の活性化剤が寿命を伸ばせなくとも、老化に伴う病気の治療に有効であろうと結論している。

参考文献
1. A drug fights off ravages of aging in mice. Science:Editor’s Choice 346, 598 (2014)
2. Aging Research-Where do we stand and where are we going? Cell: Guarente L. 159, 15-19 (2014)
3. SRT2104 extends survival of male mice on the standard diet and preserves bone and muscle mass. Aging Cell: Mercken EM et.al. 13, 787-796 (2014)

古くて新しい生物学

2014年01月29日 18:07

温故知新の生物学
  電気製品や自動車などの工学製品のみならず、生物学、基礎医学分野でもめまぐるしい技術革新が起こり,昨日の最新の情報、技術は明日にはもう古くさいものとなっている。私が研究人生を送っている最中に、様々な革新的技術が開発され、研究方法が一新され、多くの重要な生物学、基礎医学のテーマが解明されて来た。その時は分からなかったが、振り返るに生物学、基礎医学の研究史上ここ40年は最も輝ける時代であったように思える。
大発見は技術とアイデアが同期した時におこる。いくらアイデアがよくてもそれを実証する技術がなければ絵に描いた餅であり、逆に技術が進歩していてもアイデアがなければこれまた何も産まれない。このタイミングをうまく握った物が成功者となってきた。

  私が研究を始めた1970半ばは生化学全盛期の頃で、大量の生体サンプルから特定のタンパク質や分子を単離して、その性質を一つ一つ明らかにして行くという手法が研究の主流であった。そのため大量の組織から抽出しカラム操作を行なって精製して行くということが主な仕事であった。

  ところが、1980年代に入るとウイルスやがん遺伝子研究から生まれ生物、医学研究に革命をもたら遺伝子組み替え技術が応用され、様々なタンパク質のcDNAが採られるようになった。特に、生理活性を持つタンパク質の遺伝子は多くの研究者や企業の狩り場となり、激烈な競争がなされた(遺伝子hunting)。cDNAが採られると、目的とするタンパク質は細胞に融合タンパク質として発現させ、アフィニテイークロマトグラフィーを用いてのワンステップで採るという手法で簡単に精製出来るようになった。生化学的知識やクロマトの原理、技術すら知らなくとも実験出来るようになった。あれ程の努力は革新的な技術の登場によって完全に過去のものとなってしまった。

 更に、分子生物学手法が発達して、タンパク質の単離や細胞への発現、更にはタンパク質のノックアウトやノックダウンが簡単に行なえるようになると、培養細胞を利用してタンパク質の機能や作用機序を明らかにするという細胞生物学が隆盛し、物質の精製や代謝研究が主体の生化学はもはや死滅したとさえ言われた。

 2000年代に入って、生物学の最大のテーマ「人ゲノム解析プロジェクト」が完成し、全配列が決定された。ゲノム解析そのものは退屈な作業であるが、全体が決まったとなると、生物、医学に与えるインパクトは計り知れない。ゲノムから全てのタンパク質の一次構造が推定できるので、ごく一部のペプチド配列が決まるとデータベースからたちどころにタンパク質が何であるのかが決定できるようになった。タンパク質の同定も精製せずに質量分析器にかけることで、いとも簡単に出来るようになり、精製してアミノ酸シークエンサーにかけるという事も無くなった。

 その技術を応用して、タンパク質のリン酸化など、タンパク質の修飾部位を決める技術も開発され、それらを使用したプロテオミクスが行なわれるようになった。更に、タンパク質の量の変化、修飾変化が計れるようになると、今度は代謝産物の増減を計るメタボローム解析が起った。代謝産物は様々な酵素の活性の変動の結果として現れ、生体、細胞の状態を反映している。代謝産物の変化を見る事で、病気の診断に役立たり、細胞の状態を見たりしようとするメタボロミクスが流行り始めた。ゲノム解析—プロテオーム解析—メタボローム解析と時代は移って、今や代謝産物を分析するメタボロミクスがトレンドとなっているが、その流行のきっかけを作ったのは古くて新しいがん細胞の代謝研究であった。

 今から100年も昔、1920年代、Otto Warburgは「がん細胞では好気的条件下でのGlucoseの乳酸への代謝が10倍以上も上昇する」現象を見つけた。当時この現象が何を意味するのかは不明であったが、その意味が100年を経て今日明らかとなった。このaerobic glycolysisはWarburg effectと呼ばれ、「がん細胞はglucoseをエネルギー産生に使うよりも、細胞の増殖を起こすため、細胞の構成成分合成への中間代謝産物作りにまわす」ことが分かった。このWarburg effectはがん細胞に必須の特性として、がん治療薬開発のため100年を経た今、再度脚光を浴びる事になった。一時期、生化学、代謝研究は古くさいと思われ、忘れ去られた感があった。しかし現在、代謝ネットワーク研究(メタボロミクス)は様々な疾患の原因追求のみならず、増殖、分化、サバイバルのスイッチとして盛んに研究されている。

 がんが起る原因として老化の過程で、様々な遺伝子の変異が生じ、それらが累積する事が原因であるとする、Knudsonの「multi-hit hypothesis」で説明されて来たが 、実はそうではなく老化に伴って、Warburg effectと同じ代謝変化が起こりそれが細胞をがん化に向わせるという「Geroncogenesis」説が出され注目を集めている。その説では、「老化に伴う酸化的代謝の減少はWarburg effect 様の代謝変化をもたらし、oncogenic な変異を増強する。反対に、アンチエージング効果のあるカロリー制限、エクスササイズやアンチエイジング薬物(赤ワインの成分、resveratrol)などはoncogenic mutationを遅らせる事が出来る」とされる。実際に動物実験ではカロリー制限はがんの発生を抑制する。詳しくは「Geroncogenesis: Metabolic changes during aging as a driver of tumorigenesis. Cancer Cell 25, 12-19, 2014」を参照。
  老化に伴っての代謝の変化、つまりグルコースがミトコンドリアのエネルギー産生の低下により細胞構成成分の脂質や核酸合成に向けられる「Warburg effect」が起こりこれががんを引き起こすという。また糖尿病や動脈硬化など様々な病気も代謝異常によって起るし、単純な糖代謝産物がエピジェネチックに細胞の分化を調節し、その異常でがんが生じる事も分かって来た。かくして今や古くさい学問 「生化学、代謝学」が蘇って流行の最先端となっっている。

  コンピューター、電化製品、工業製品などは技術革新により、より良い新しい機能を持った製品が開発されると、もはや古いものは見向きもされなくなる。しかし生物学研究では温故知新「古きを温めて新しきを知る」が十分通用する世界である。生物学の基本はすでに存在する生物、究極は人間から真実を再発見し、学ぶことである。科学技術は日新月歩であるが、生き物を構築する生命現象は、常にそこにあり、変わる事は無く、生命の法則の神秘が明らかにされることをじっと待っている。

蜘蛛の糸を人工的に作り出すことに成功

2013年06月17日 16:57

蜘蛛の糸の工業化

蜘蛛の糸は軽い上に強度は鋼鉄よりも強く、それでいて収縮性にすぐれた夢の繊維と言われ、その実用化ができれば応用性は計り知れない。

先日TVを見ていたら山形県鶴岡市の慶応のバイオベンチャーのスパイバーで蜘蛛の糸の量産化に成功し、蜘蛛の糸で編んだドレスを作ったというニュースをやっていた。蜘蛛の糸は以前にBlogでも取り上げた生物の持つ機能を模倣して役に立つ物を作ろうという生物模倣製品の中の最大の目標の一つであった。鋼鉄よりも強い強度を持ち、ナイロンよりも伸縮性のある蜘蛛の糸の量産化ができれば、自動車の車体や飛行機の胴体から破れない服などその応用性は計り知れない。天然素材であるので人工血管などの幅広い医療応用も考えられ、石油製品と異なり、環境に易しい。世界中の研究者がその量産化を狙っていたが、プロリンを多く含むタンパク質の微生物での発現は非常に難しく、宇宙開発のNASAでもgive upしたくらいであった。そのように非常に発現させることの難しい蜘蛛の糸を発現し易いように遺伝子を改変しついに蜘蛛の糸の大量発現にこぎ着けたそうである。市場に製品として出回るのは4−5年先だそうであるが、それが楽しみである。いよいよスパイダーマンの実現も夢ではなくなった。

スパイバーの関山和秀社長(30)は成功すれば何兆円もの経済効果がある。蜘蛛の糸で新しい産業を生み出したいと大きな抱負を述べている。日本の将来を切り拓くのはこのような人物であろう。

絶滅に瀕しているSmall Science

2012年10月29日 19:00

Big Scienceの隆盛とSmall Scienceの凋落

Science誌のchief editorのBruce Alberts によるThe end of small science?という記事があった。(Science 337, 1583, 2012 by Bruce Alberts)
彼がこの記事を書こうと思ったのは今月だけで30に及ぶ論文がENCODE Project Consortiumから出されたことによるという。
これは442人の国際チームから構成され、ここ数十年に渡る長い研究による結果からDNA elementsの百科事典と言われるヒトゲノムの機能要素の網羅的リストを編集したもの。この詳細な俯瞰は生命、健康、病気の基礎研究に拍車をかけた。エンコデは正にBig Scienceの典型で重要な研究テーマを席巻しつづけるであろうし、データ生産効率は驚異的に高い。

これは生物学研究のSmall Science の時代の終焉を意味するのであろうか? その答えはNoであると期待したい。
Human Genome Projectの輝かしい成功は2004年に30億以上のDNAの核酸配列がほぼ完成した事で、ピークを迎えた。そしてproteomics, transcriptomics, epigenomics やmetabolomicsなどのomics projectを誘発した。これらのBig Scienceの発展は価値ある新たな方法論を発達させたが、同時に各々の研究のスケールの増大を引き起こした。しかもそのスケールでの研究は常に行なわれ続け、一旦走り出せばダメと分かった時点でもストップさせる事は難しい。

現在の厳しい財政状況下、どのようなプロジェクトがサポートに相応しいのか決めるのは困難である。何をやるべきなのか?5年ごとに改訂されるcell biologyのtext bookの著者として、私は非常に単純な細胞の理解に於いても大きなギャップがある事を知っている。
例えば大腸菌について考えてみよう。大腸菌は分子生物学の初期では主要なモデル生物であるが、ゲノムがコードする4000タンパク質の4分の一のタンパク質の機能は分かっていない。
2番目の例として、ヒトの細胞はおおよそ10000のタンパク質を含み、それらが何百もの異なった複合体に組織され、タンパク質マシンとして機能している。生物学を意味あるものにし理解する事で健康上の利益を得るためには、まだまだ生化学者によってそのタンパク質マシンを詳細に研究する必要がある。それらの仕事は典型的な小さな研究室でなされる。
最後に、細胞のもっとも興味深い性質はemergent propertyである。それはタンパク質マシンを含む多くの異なった分子間の相互作用の巧妙なネットワークから生じる。現在この複雑性を解読する能力は無い。多くの仕事は大腸菌のような比較的単純な系でのsmall scienceを通してなされる必要がある。
毎年、研究者が取得する細胞に関する情報は増加し、omics projectにより非常に早いスピードで膨張している。しかし生命科学の深い理解を得るという真のチャレンジには詳細なカタログ作成を越え、その先に行く必要がある。生命システムの複雑さを理解する努力をしている革新的な小さな研究室の重要な仕事の財政的援助をするため、また将来の生物科学の成功を確実にするには大型のセンターやomics-like projectの増加を抑制する必要がある。

正に日本でも同じ事が起こっている。大型の研究プロジェクトとしてゲノム、プロテオーム、ケミカルバイオロジーやはたまたノーベル賞によってさらにその勢いに拍車をかけたiPS研究や再生医療にまとまった金が投入されている。それはそれでいいのだけど、基礎科学への予算は別にして欲しい。大型プロジェクトへ予算が割かれると結局、残りのパイは益々少なくなり、大勢の研究者がその小さいパイに群がるようになる。
そのような大型予算とは別に、個人個人が自由に小さな研究室で行なうSmall Science研究への予算を残して欲しい。そうしなければ予想不可能な巧妙な生命の謎に迫る新たな概念を打ち立て、新しい領域を切り拓く事は難しくなるであろう。

赤ワインのanti-aging物質、Resveratrolって効くの?

2012年10月11日 18:29

anti-aging ポリフェノール、Resveratrol

赤ワインに含まれるanti-agingの物質として富みに有名。Resveratrolの錠剤が売り出され、健康食品のブームになっている。Resveratorolを飲んでいれば健康で,長生きできるとの宣伝がTVなどでなされているが、どこまで事実であろうか?現在までに分かっている事を調べてみた。

Resveratrol(3,5,4-trihydroxy-trans-stilbene)は天然に産するフェーノールで様々な動物や人への効果が現在トピックとなっている。しかし多くのモデル動物での延命効果は確定していない。マウスやラットの実験ではがんの発症率の低下、抗炎症効果、血糖値低下作用や心臓への効果が示されている。しかし人において効果は全体的にpositiveではあるが弱い。

Resveratrolはぶどうの皮や他の果実から見つけられた。赤ワイン中のresveratrolは少なく、0.1-14.3 mg/lの濃度である。また化学合成によっても作られる。
サプリとして売られているがこれは主にJapanese knotweedから採られる。
Knotweedとは日本名イタドリまたはスカンポで、古来より生薬として食されている植物で川縁などによく見られる。
Resveratrolの寿命延長作用は2003年にHowitz and SinclairによってNatureに発表された。その結果によればResveratrolは酵母の寿命を明らかに伸ばす。そして線虫やショウジョウバエの寿命も延長した。
2007年になって他のグループも線虫やショウジョウバエの寿命延長効果を認めたが、他方、違うグループはその効果を認めなかったという。その後紆余曲折があり、結論として「年老いたマウスへの全体的な効果は良好であったが寿命延長効果は弱かった」と報告された。そして、最終的にNational Institute on Aging (NIA)が投与量を3種類に変えて実験をし、延命効果は認められなかったと判定した。
結論として言えるのは「延命効果は認められなかったものの様々ながんの予防効果は認められた、しかし経口投与での効果は弱かった。」

また赤ワインを飲むフランス人は心疾患が少ないとの定説からResveratrolの心疾患抑制効果が調べられた。Resveratrolの心疾患抑制効果の多くはDipak K. Dasの研究で証明されて来たが、彼が多くの論文を捏造していたこともあって、データの信憑性が疑われていた。Dipak K. Dasはコネチカット大学ヘルスセンターの心血管研究センターの外科の教授でResveratrolの効果の研究では著名であった。500報に及ぶ論文を書いているがそのうちの117報がResveratrolについてであったが、非常に多くの彼の書いた論文で捏造や不正が発見され、現在大学を解雇される手続きが進んでいるという。赤ワイン研究データ捏造者として有名になっている。
彼は多くの捏造データを作成し発表したが、心筋梗塞のモデル実験で赤ワインと同じく抑制効果がある事は確認されている。Resveratrolは動物実験で糖尿病抑制効果、抗炎症効果や神経変性抑制効果なども報告されている。

作用機序

この項は少し難しいかもしれないが我慢の程を。
カロリー制限によって生じる生化学的な変化の多くをResveratrolの投与で再現できる。ResveratrolはSirtuin 1 (SIRT1)やPGC-1αを活性化してミトコンドリアの機能や代謝を改善する。SIRT1は長寿遺伝子とも言われ、NAD-依存性の脱アセチル化酵素で代謝に重要な転写因子のPGC-1α やFOXO3αを脱アセチル化して活性化するためResveratrolが寿命を伸ばすのではないかと一躍脚光を浴びた。しかしResveratrolは直接SIRT1を活性化しない。
ResveratrolはMnSOD (SOD2)を14倍活性化し、過酸化物を減少させる。その作用機序はResveratrolにより SIRT1/ NAD+が活性化され、FOXO3αを脱アセチル化するとその転写活性が上がり、 MnSODの発現が強く促されることによる。

Resveratrolは直接SIRT1の活性化は出来ないと言われていたが、SIRT1活性化に至るシグナル伝達がごく最近のCell(148, 421-433, 2012)の論文で明らかとなった。Resveratorolはphosphodiesterase (PDE)を阻害しcAMPを上昇させ、その結果シグナルがEpac1/CaMKKβ/AMPK/SIRT1活性化に繋がりPGC-1αを活性化してミトコンドリアの機能を改善する。

結論

現在分かっていることはResveratrolは寿命を延ばす効果はないものの、がん抑制効果、新血管系改善効果やアルツハイマー病などの神経変性疾患などを予防するなどの効果が動物実験で認められている。しかしその効果は弱いのと吸収が悪いため経口では効きにくいという欠点がある。更に強いSIRT1活性化薬剤の開発が多くの製薬会社で現在試みられている。
参考総説:Resveratrol as a calorie restriction mimetic: therapeutic implication (Trends in Cell Biol. 22, 546-554, 2012)


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